局面によって「有利な投資スタイル」は変わる
第4回では、
- 企業価値は「将来利益の現在価値」で決まる
という前提から、
- グロース株は「遠い将来の利益」に価値が集中している
- バリュー株は「近い将来の利益」に価値が集中している
という違いを確認しました。
この「利益の時間分布の違い」は、
金利(=割引率)の変化に対する感応度の違いとして表れます。
つまり、金利環境という「局面」によって、
有利な投資スタイルは変化するということです。
■ 金利低下局面:なぜグロース株は有利になるのか?
金利が低下すると、割引率も低下します。
割引率が低下するということは、
遠い将来の利益の現在価値が大きく上昇するという意味です。
グロース企業の価値の多くは、
5年後・10年後といった将来の利益に依存しています。
したがって、
割引率の低下
↓
将来利益の現在価値の上昇
↓
評価倍率(PER)の拡大
という経路を通じて、同じEPSでも株価が上昇しやすくなります。
これは、第0回で整理したリターン分解のうち、
③ 評価倍率(PER)の変化によるリターンです。
■ 金利上昇局面:再び起こる「ダブルパンチ」
逆に金利が上昇すると、割引率も上昇します。
その結果、
- 将来利益の現在価値が低下する
- 評価倍率(PER)の根拠が弱まる
という変化が起こります。
グロース株は「遠い将来の利益」に依存しているため、
という影響を強く受けます。
さらに、金利上昇は景気減速を伴うことも多く、
EPS成長率の期待そのものが引き下げられる可能性があります。
これは、第1回で確認した「EPS成長の鈍化」と「PERの低下」によって株価が下落する、いわゆる「ダブルパンチ」と同じ構造が、金利上昇という外部要因によって引き起こされていると解釈できます。
EPS成長期待の低下(①) + 評価倍率の低下(③)
= 2つの要因が同時に株価を押し下げる
■ バリュー株は「無関係」ではない
一方で、バリュー株は、既に収益化されている事業、
近い将来の利益、安定したキャッシュフローに価値の多くが依存しています。
そのため、割引率の上昇によるPER低下は起こりうるが、
グロース株と比較して影響が小さい傾向があります。
バリュー株も金利上昇の影響を受けないわけではありませんが、
となりやすいのです。
■ 投資スタイルの優劣ではなく「依存度」の違い
ここで重要なのは、投資スタイルの優劣ではなく、
株式リターンのどの要素に依存しているかという点です。
| リターン源泉 | グロース株 | バリュー株 |
|---|---|---|
| ① EPS成長 | 高依存 | 中程度 |
| ② 配当 | 低依存 | 高依存 |
| ③ PER変化 | 高依存 | 低依存 |
金利低下局面では、
③(評価倍率の拡大)に依存するグロース株が有利になり、
金利上昇局面では、
②(配当)や近い将来の利益に依存するバリュー株が相対的に有利となりやすいのです。
■ 局面に依存しないポートフォリオ設計とは?
もしリターンの多くを、③ 評価倍率の変化に依存している場合、
そのパフォーマンスは金利環境という外部要因に強く左右されます。
一方で、① EPS成長や② 配当への依存度を高めたポートフォリオは、
金利という「局面」に対する耐性を持ちやすくなります。
これは、第0回で扱った「リターンの源泉を分解する」という考え方を
ポートフォリオ設計に落とし込んだものです。
