なぜ金利がPERを動かすのか(割引率という視点)
ここで扱っているのは、第0回で整理した株式リターンのうち、③(評価倍率の変化)がなぜ生じるのかという構造的な説明です。
第1回・第3回では、
- EPSが成長していても
- PERの低下によって株価が下落する
という「マルチプル縮小」という現象を確認しました。本稿では、その引き金の一つとなる割引率(=金利)の変化に焦点を当てます。
■ 割引率とは何か(直感的理解)
1年後の100円は、今の100円と同じ価値ではありません。将来のお金は、
- 時間的な不確実性
- 他の投資機会
を考慮すると、現在の価値に換算した場合に目減りします。この「将来のお金を現在の価値に換算する際の目減り率」が、割引率です。
※nは年数(例:10年後の利益は10回割り引かれる)
割引率が高いほど、将来の利益は現在価値として小さく評価されます。
■ 割引率の構成要素
割引率は一般に、
- 無リスク金利
- リスクプレミアム
の合計として表されます。株式投資は国債などと比較して不確実性が高いため、そのリスクに見合った上乗せ分(=リスクプレミアム)が必要となります。
金利が上昇すると、割引率も上昇します。
■ 割引率とPERの関係
第3回で整理した理論株価は、
という形で表現されます。割引率が上昇し、将来利益の現在価値が低下すると、同じEPSでも、割引率が上昇すれば評価倍率は低下します。
割引率の上昇は、期待PERの低下として表現されます。
第1回・第3回で確認したマルチプル縮小の一因は、この割引率の変化にあります。
■ なぜグロース株は金利に弱いのか
企業価値の構成要素を考えると、
- 近い将来の利益に依存する企業
- 遠い将来の利益に依存する企業
では、割引率の影響度が異なります。利益の多くが近い将来に集中する成熟企業(バリュー株)に対し、成長企業(グロース株)は、5年・10年後の大きな利益を現在価値に換算した評価に依存します。
将来のキャッシュフローほど、割引率の影響を強く受けるため、
- 金利上昇 → 割引率上昇
- 遠い将来利益の現在価値が低下
- 評価倍率の根拠が失われる
- PERの低下
という影響が顕著になります。
