【第0回|前提編】なぜバリュエーションを学ぶのか?

投資リターンの構造を知る

株価が「高い」「安い」と言われるとき、私たちは何を基準にしているのでしょうか。

PERが高いから割高。
PBRが1倍だから割安。
金利が上がるから株は下がる。

こうした言葉は日常的に使われていますが、それらの判断は本当に「将来の投資リターン」と結びついているでしょうか。

■ 株式リターンは3つの要素に分解できる

長期投資における株式リターンは、概ね次の3つに整理できます。

株式リターン ≒

利益成長(EPS成長)
株主還元(配当・自社株買い)
評価倍率の変化(マルチプル:PERなど)

①と②は企業活動に由来するリターンであり、③は市場参加者の評価の変化によって生じるリターンです。

①②は企業が生み出すリターン、
③は市場が与えるリターンです。

■ 期待リターンの中身を確認する

例えば、次のような前提を置いたとします。

  • EPS成長率:6%
  • 配当利回り:2%
  • 評価倍率(PER)は維持される

配当を再投資することを前提とすれば、期待リターンは概ね次のように整理できます(※大まかな近似)。

期待リターン ≒ 6% + 2%

ここで重要なのは、「PERが維持される」という仮定が暗黙に含まれている点です。

PERなどの評価倍率(マルチプル)は、

  • 金利
  • 景気循環
  • リスク許容度

といった外部環境によって変化する可能性があります。

つまり、③の要素は将来の投資リターンを押し上げることもあれば、押し下げることもある「市場要因」です。

■ リターンの“依存先”を把握する

評価倍率の変化を正確に予測することは困難です。

したがって重要なのは、

あなたの投資リターンが、
③(市場の評価維持・拡大)にどれだけ依存しているかを把握すること。

企業の成長や株主還元といった①②の要素に依存したリターン設計は、外部環境の変化に対して相対的に頑健です。

■ このシリーズで扱うこと

  • PERとは何を意味するのか
  • 企業によって使う指標が異なる理由(PSR・EV/EBITDA・PBRなど)
  • 理論株価という仮定の整理
  • 金利とバリュエーションの関係
  • 成長企業から成熟企業への移行とマルチプル修正
  • 期待リターンの逆算方法

「なぜその株を買うのか?」を、
感覚ではなく構造で説明できるようにすること。