第1章:景気は「企業 → 雇用 → 消費 → 物価」で動く

景気はどこから動くのか──企業・雇用・消費・物価の基本構造

経済指標を投資に活かすコツは、「どの指標が強い/弱いか」を覚えることではありません。それよりも先に、景気がどこから動き、どこへ波及していくのかという順番(流れ)を頭に入れることが重要です。

この章では、米国景気を読むための基本となる一本道を作ります。
この流れさえ押さえれば、ニュースや経済指標は「暗記」ではなく、整理して理解するものに変わります。

1. まず覚えるべき「景気の基本ルート」

米国景気は、投資家の視点では次の順番で動いていきます。

企業心理

生産・受注

雇用

消費

物価(インフレ)

GDP(結果のまとめ)

ここで、まず読者に伝えておきたい安心ポイントがあります。

  • 経済指標は、バラバラに覚えなくていい
  • この順番に当てはめるだけで、ニュースが整理できる
  • あとは「今、どこが動いているか」を探すだけ

投資は知識量の勝負ではありません。「流れの中で考える」ことができるかどうかです。

2. 景気の波及フローを分解して理解する

ここからは、先ほどの流れを一つずつ噛み砕いて見ていきます。

① 企業心理(最初に動く)

「これから売れそうか? 儲かりそうか?」
景気のスタート地点は、企業の先行きに対する感覚です。

企業が不安を感じ始めると、まず新規投資や採用に慎重になります。
この段階では、まだ数字に大きな変化は出ていません。

② 生産・受注(現場が動く)

企業心理が「行動」に変わると、受注や生産に表れます。

  • 受注が増える → 生産を増やす
  • 受注が減る → 在庫調整・生産カットが始まる

重要なのは、「受注 → 生産」には時間差があるという点です。
受注が落ち始めると、生産は遅れて減速します。

③ 雇用(遅れて効いてくる)

仕事が増えれば、企業は人を雇い、残業を増やします。逆に仕事が減っても、すぐに解雇が起きるわけではありません。

採用停止 → 残業削減 → レイオフ、という順番で進むため、雇用は景気に対して遅行しやすいのが特徴です。

④ 消費(米国景気のエンジン)

米国景気の主役は、個人消費です。雇用と賃金が安定していれば、人はお金を使います。

しかし雇用に不安が出ると、まず節約が始まります。
この「消費が止まるかどうか」が、景気の腰折れポイントになります。

⑤ 物価(最後に表面化する)

需要が強く、賃金も上がると、企業はコストを価格に転嫁します。

  • 需要が強い
  • 人件費が上がる

この2つがそろって、インフレが持続的に表面化します。
物価は、景気の流れのかなり後半に出てくる結果です。

⑥ GDP(景気の「通信簿」)

GDPは、ここまでの動きを1つの数字にまとめた結果指標です。
企業活動・雇用・消費の積み重ねが、四半期ごとに集計されます。

重要:
GDPは「景気を予測する指標」ではありません。
景気の流れが、どう着地したかを確認するための指標です。

米国GDPの約7割は個人消費が占めています。
つまり、雇用と消費が崩れれば、GDPは必ず遅れて悪化します。

3. この順番は「基本ルート」にすぎない

ここまで説明した流れは、あくまで基本形です。

  • 途中で詰まる:雇用は強いが消費が伸びない
  • 途中が飛ぶ:供給ショックで物価だけ先に上がる
  • スピードが変わる:雇用は特に遅れやすい

だからこそ、次章以降では
「どこでズレるのか」「どこで止まりやすいのか」
を指標と一緒に見ていきます。

章末まとめ(投資への変換)

米国株で大事なのは、GDPの数字を見ることではありません。
GDPを作っている途中の流れの、どこが動いているかを特定することです。

企業心理 → 雇用 → 消費 → 物価
どこが強く、どこが弱いのかで、景気の局面が見えてきます。
次へ ▶ 第2章:企業心理を映す【最初に動く指標】