経験則ではなく、現在価値の計算式で読み解く金利と株価の関係
─ なぜ金利上昇はグロース株に厳しいのか
金利上昇局面でよく語られるのが、「グロース株が売られ、バリュー株が相対的に強くなる」という現象です。
これは雰囲気や経験則ではなく、株価の計算式(現在価値)にかなり素直に現れます。
この記事では、次の2つの軸で整理します。
- ① 割引率(ディスカウントレート)
- ② グロース株は「ロング・デュレーション資産」である
前提として、長期金利は「すべての資産の割引率の土台」という考え方を共有していると、理解が一段深まります。
1. 結論:グロース株は「未来の利益」で値段が付いている
株価は大まかに言えば、将来得られるキャッシュフローを現在価値に割り引いた合計です。
金利が上がる局面では、一般に割引率が上昇しやすくなります。すると、将来の利益の現在価値は小さく計算されます。特にグロース株は、以下の特徴があります。
- 利益の多くが将来に集中している
- 「将来の成長期待」に高い評価が付いている
2. 割引率が上がると、なぜ株価は下がりやすいのか
イメージは非常にシンプルです。
100万円
100万円
この2つは同じ価値ではありません。金利が高いほど、将来のお金の「今の価値」は小さくなります。
株式評価における割引率とは、まさにこの考え方です。国債利回りなどの「安全な利回り」が上がると、投資家が株式に求める期待リターンも引き上げられやすくなり、結果として、株価は理論的に下方向の圧力を受けます。
3. グロース株が特に弱い理由①:株のデュレーションが長い
債券には「デュレーション(金利変化に対して、価格がどれだけ敏感に動くか)」という概念がありますが、同じ考え方は株にも当てはめられます。
価値の回収が将来に偏るほど、割引率変化に敏感になる。
グロース株は「利益が出るまでに時間がかかる」「遠い将来の成長期待が大きく織り込まれている」ため、本質的に「ロング・デュレーション資産」と考えられます。
金利が少し上がっただけでも、
「遠い将来の価値」が大きい資産ほど現在価値は大きく揺れます。
4. グロース株が特に弱い理由②:資金調達コストの上昇
グロース企業は事業拡大のために、借入や社債発行、増資など、外部資金に依存するケースが多い傾向があります。
金利上昇による実利的なダメージ:
- 借入コストが上昇する
- 投資の採算ライン(ハードルレート)が厳しくなる
結果として、将来キャッシュフローの期待値が下方修正されやすいという面でも、株価に逆風になります。
5. グロース株が特に弱い理由③:安全資産との相対比較
金利上昇局面では、国債や預金といった比較的安全な資産の利回りが上昇します。
「高い期待成長を前提に、高い価格で買うグロース株」の相対的な魅力が低下
リスクを取って株式に投資しなくても、安全な国債で一定の利回りが得られるようになると、割高な資産から資金が抜けやすくなります。
6. 例外:金利が上がってもグロースが売られない局面
重要なのは、金利上昇=必ずグロース売りではないという点です。
- 景気の強さによる金利上昇:金利負担増を利益成長が上回る場合
- 織り込み済み:金利上昇がすでに株価に反映されていた場合
- 実質金利の安定:名目金利が上がっても物価上昇率も高い場合
見るべきなのは、「金利が動いた」事実よりも、
「なぜ動いたか」「市場の想定との差」です。
7. 投資家・観察者が持つべき視点
- 長期金利は上がっているか、下がっているか
- それは景気由来か、不安由来か
- 株価の下落は「利益(EPS)」か「倍率(PER)」のどちらか
これを切り分けるだけで、相場の見え方は大きく変わります。
まとめ:グロース株は金利に「構造的に弱い」
金利上昇局面でグロース株が売られやすいのは、以下の構造的な理由によるものです。
- 割引率上昇の影響を強く受ける
- ロング・デュレーション資産である
- 資金調達コストが上がりやすい
重要なのは、これを売買シグナルとして使うことではなく、
自分のポートフォリオが「どんな環境に弱いか」を理解する材料にすることです。
この記事では、金利の一側面(長期金利/実質金利/カーブ形状など)を切り出して解説しました。
ただし投資判断では、 「どの金利が、どんな理由で動いているのか」を 資産クラス全体との関係で俯瞰することが重要になります。
