なぜ金利が上がるとグロース株が売られるのか| 割引率と「株のデュレーション」からの構造理解

経験則ではなく、現在価値の計算式で読み解く金利と株価の関係
─ なぜ金利上昇はグロース株に厳しいのか

金利上昇局面でよく語られるのが、「グロース株が売られ、バリュー株が相対的に強くなる」という現象です。

これは雰囲気や経験則ではなく、株価の計算式(現在価値)にかなり素直に現れます。

この記事では、次の2つの軸で整理します。

  • ① 割引率(ディスカウントレート)
  • ② グロース株は「ロング・デュレーション資産」である

前提として、長期金利は「すべての資産の割引率の土台」という考え方を共有していると、理解が一段深まります。

1. 結論:グロース株は「未来の利益」で値段が付いている

株価は大まかに言えば、将来得られるキャッシュフローを現在価値に割り引いた合計です。

金利が上がる局面では、一般に割引率が上昇しやすくなります。すると、将来の利益の現在価値は小さく計算されます。特にグロース株は、以下の特徴があります。

  • 利益の多くが将来に集中している
  • 「将来の成長期待」に高い評価が付いている
👉 この構造ゆえに、グロース株は割引率上昇の影響を最も受けやすいのです。

2. 割引率が上がると、なぜ株価は下がりやすいのか

イメージは非常にシンプルです。

パターンA 今日もらえる
100万円
パターンB 10年後にもらえる
100万円

この2つは同じ価値ではありません。金利が高いほど、将来のお金の「今の価値」は小さくなります。

株式評価における割引率とは、まさにこの考え方です。国債利回りなどの「安全な利回り」が上がると、投資家が株式に求める期待リターンも引き上げられやすくなり、結果として、株価は理論的に下方向の圧力を受けます。

3. グロース株が特に弱い理由①:株のデュレーションが長い

債券には「デュレーション(金利変化に対して、価格がどれだけ敏感に動くか)」という概念がありますが、同じ考え方は株にも当てはめられます。

価値の回収が将来に偏るほど、割引率変化に敏感になる。

グロース株は「利益が出るまでに時間がかかる」「遠い将来の成長期待が大きく織り込まれている」ため、本質的に「ロング・デュレーション資産」と考えられます。

金利が少し上がっただけでも、
「遠い将来の価値」が大きい資産ほど現在価値は大きく揺れます。

4. グロース株が特に弱い理由②:資金調達コストの上昇

グロース企業は事業拡大のために、借入や社債発行、増資など、外部資金に依存するケースが多い傾向があります。

金利上昇による実利的なダメージ:

  • 借入コストが上昇する
  • 投資の採算ライン(ハードルレート)が厳しくなる

結果として、将来キャッシュフローの期待値が下方修正されやすいという面でも、株価に逆風になります。

5. グロース株が特に弱い理由③:安全資産との相対比較

金利上昇局面では、国債や預金といった比較的安全な資産の利回りが上昇します。

「高い期待成長を前提に、高い価格で買うグロース株」の相対的な魅力が低下

リスクを取って株式に投資しなくても、安全な国債で一定の利回りが得られるようになると、割高な資産から資金が抜けやすくなります。

6. 例外:金利が上がってもグロースが売られない局面

重要なのは、金利上昇=必ずグロース売りではないという点です。

  • 景気の強さによる金利上昇:金利負担増を利益成長が上回る場合
  • 織り込み済み:金利上昇がすでに株価に反映されていた場合
  • 実質金利の安定:名目金利が上がっても物価上昇率も高い場合

見るべきなのは、「金利が動いた」事実よりも、
「なぜ動いたか」「市場の想定との差」
です。

7. 投資家・観察者が持つべき視点

  • 長期金利は上がっているか、下がっているか
  • それは景気由来か、不安由来か
  • 株価の下落は「利益(EPS)」か「倍率(PER)」のどちらか

これを切り分けるだけで、相場の見え方は大きく変わります。

まとめ:グロース株は金利に「構造的に弱い」

金利上昇局面でグロース株が売られやすいのは、以下の構造的な理由によるものです。

  • 割引率上昇の影響を強く受ける
  • ロング・デュレーション資産である
  • 資金調達コストが上がりやすい

重要なのは、これを売買シグナルとして使うことではなく、
自分のポートフォリオが「どんな環境に弱いか」を理解する材料にすることです。

この記事では、金利の一側面(長期金利/実質金利/カーブ形状など)を切り出して解説しました。

ただし投資判断では、 「どの金利が、どんな理由で動いているのか」資産クラス全体との関係で俯瞰することが重要になります。

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