すべての資産の「割引率」を理解する
─ 10年国債利回りが株価に与える構造的影響
株式投資をしていると、ニュースや相場解説で頻繁に登場するのが「10年国債利回り(=長期金利)」です。
この指標は、単なる金利データではなく、株価の見え方(割高・割安)、市場心理、企業の資金調達環境にまで影響します。
本記事では、投資初心者〜中級者向けに、「10年国債利回りとは何か」「なぜ株価に影響するのか」「どう使えば誤解しにくいか」を、できるだけシンプルかつ正確に整理します。
1. 10年国債利回りとは何か(基本定義)
10年国債利回りとは、「国(政府)に10年間お金を貸した場合に、市場が期待する年率リターン」を表す指標です。
米国では、FRB(米連邦準備制度)が公表する 10-Year Treasury Constant Maturity Rate が、長期金利の代表として広く参照されています。
💡 重要なのは、これは「政府が保証する信用力」を前提とした利回りであり、株式や社債など、よりリスクの高い資産を評価する際の基準点として使われやすい、という点です。
2. 債券の超重要ルール:利回りと価格は逆に動く
債券は「将来受け取る利息と元本」があらかじめ決まっている金融商品です。そのため、市場価格が変わると、利回りは逆方向に動きます。
- 📈 債券価格が上がる(買われる) → 利回りは下がる
- 📉 債券価格が下がる(売られる) → 利回りは上がる
ニュースで「10年国債利回りが上昇」と聞いたときは、多くの場合、「国債が売られ、価格が下がった」という背景があると理解すると整理しやすくなります。
3. なぜ株価に効くのか:割引率という考え方
株価は理論的には、「将来生み出される利益(キャッシュフロー)の現在価値の合計」と考えられます。この「将来の利益を、今の価値に引き直す」際に使われるのが割引率(ディスカウントレート)です。
リスクフリーレートとしての役割:
- 利回りが低い:割引率が低くなりやすい → 将来利益の価値が大きく見える
- 利回りが高い:割引率が高くなりやすい → 将来利益の価値が小さく見える
👉 このため、10年国債利回りの上昇は、
株式のバリュエーション(評価)に逆風として意識されやすくなります。
4. 「金利↑=株↓」が常に正しいわけではない
よくある誤解が、「長期金利が上がると株は必ず下がる」という単純な理解です。実際には、なぜ利回りが上がっているのかによって、株価の反応は変わります。
① 景気が強く、成長期待で金利が上がる場合
企業業績の改善期待は株価にとってプラス要因です。割引率上昇という逆風はあっても、利益成長がそれを上回れば、株価は上昇することも珍しくありません。
② インフレ不安・財政不安で金利が上がる場合
この場合、利回り上昇は「安心」ではなく不確実性やリスクプレミアムの上昇を意味し、株価には重しになりやすくなります。
5. 10年国債利回りを動かす3つの要因
- ① 将来の政策金利の見通し:今後の利上げ・利下げ予想は、長期金利に強く影響します。
- ② インフレ期待:将来の物価上昇が見込まれるほど、高い利回りが要求されます。
- ③ 需給・リスク要因:国債発行増加や、リスク回避姿勢の変化でも利回りは動きます。
投資判断では、「今、どの要因が主に効いているのか」を考えるだけでも、相場の見え方が整理されます。
6. 株式投資での使い方(初心者〜中級者向け)
- まずは方向を見る(上昇トレンドか、低下トレンドか)
- 次に理由を考える(景気?インフレ?政策?)
- 株のタイプ別に影響を整理する
一般に、将来の成長期待が大きいグロース株は割引率の影響を受けやすく、足元の利益が中心のバリュー株は相対的に影響を受けにくい傾向があります(※絶対ではありません)。
7. 日本の長期金利との違い(補足)
日本では、日銀が長年イールドカーブ・コントロール(YCC)によって10年国債利回りを誘導してきました。そのため、米国ほど「市場の需給だけ」で動いてこなかった時期があり、同じ10年金利でも意味合いが異なる局面があった点には注意が必要です。
まとめ:10年国債利回りは「株価の重力」
- 理論面では、株価評価の土台となる「割引率」
- マクロ面では、景気・インフレ・政策見通しの集合体
相場を見るときは、「利回りが上がった/下がった」だけでなく、「なぜ動いたのか」までセットで捉えることが、判断ミスを減らす第一歩になります。
この記事では、金利の一側面(長期金利/実質金利/カーブ形状など)を切り出して解説しました。
ただし投資判断では、 「どの金利が、どんな理由で動いているのか」を 資産クラス全体との関係で俯瞰することが重要になります。
