【企業図鑑】Sumitomo Corporation
「選別と集中」で磨き上げる事業ポートフォリオ
400年の伝統と「事業経営」の力で、稼ぐ力のステージを一段引き上げる
この企業に注目する理由
── 徹底した「自己規律」により、ポートフォリオを大胆に組み替えている
住友商事は現在、2026年度を最終年度とする「中期経営計画2026」の真っ只中にあります。同社の最大の特徴は、住友の事業精神である「浮利(目先の利益)を追わず」を体現した、厳格な投資判断と資産入替にあります。
2025年度第2四半期決算では、通期利益見通し5,700億円を据え置くなど着実な進捗を見せています。単なる規模拡大ではなく、成長性と資本効率を重視した「再構築」を通じて、2026年度に最高益水準となる6,500億円超をめざす強い変革の意志が感じられます。
🔬 第1章:どんな企業なのか(輪郭と事業構造)
── 6つの事業グループが織りなす「生活・インフラ」に強い商社
住友商事は「金属」「輸送機・建機」「インフラ」「メディア・デジタル」「生活・不動産」「資源・化学品」の6つの事業グループを展開しています。他商社と比較して、DXを先導するSCSKや、CATVのJCOM、ドラッグストアのトモズなど、消費者に近い「川下」から中流の事業に厚みがあるのが特徴です。
2025年度第2四半期の当期利益は3,012億円(進捗率53%)と順調です。特に北米の鋼管事業や建設機械販売、SCSKを含むITビジネスが収益を牽引しています。また、SCSKによるネットワンシステムズの完全子会社化(公開買付け)を進めるなど、DX領域での圧倒的なプレゼンス確立に向けた大型投資を加速させています。
💡 第2章:なぜ特別なのか(競争優位の源泉)
住友商事の競争力の源泉は、長年培ってきた「現場を経営する力」と、時代に合わせて事業を捨て、新しきを創る「新陳代謝の仕組み」にあります。
🔍 深掘り:「事業経営」を軸とした価値創造
同社は、単に株を持つだけでなく、自社からプロ経営者を派遣し、事業価値を抜本的に高めるスタイルを得意としています。
- デジタルとリアルの融合:IT子会社SCSKと、物流・小売のリアルの接点を組み合わせ、DX(デジタルトランスフォーメーション)を実益に変える力を持っています。
- 厳格な事業選別:「再構築事業」を指定し、収益性が改善しない事業からは勇退する方針を徹底。2026年度までに約5,000億円の資産入替を行う計画を推進しており、資本効率を構造的に高めています。
- グリーン転換の先導:「エネルギートランスフォーメーション(EX)」を重点分野とし、世界規模での再エネ開発や、水素・アンモニア等の次世代燃料へのシフトを産業基盤から支えています。
⚙️ 第3章:課題と向き合い方(リスクと還元の方針)
資源価格の下落や景気後退リスクに対し、市況に左右されない「基礎収益」の拡大で対抗しています。
🤔 投資家が注目すべき「株主還元」
住友商事は、株主との対話を重視し、明確な還元方針を掲げています。
- 累進配当の導入:2025年度より、配当を「前年を下回らない(累進配当)」方針を明文化しました。
- 配当性向の向上:2024年度の130円から、2025年度は135円(期初予想)への増配を計画。配当性向35%〜40%をめざし、安定的な還元を実現しています。
- 機動的な追加還元:業績見通しに応じて、自社株買いなどの追加還元も検討する柔軟な姿勢を持っています。
🌿 第4章:未来像(2026年とその先へ)
住友商事がめざすのは、環境変化に強い「レジリエンス(しなやかな強さ)」を持つ企業体です。
重点領域へのリソース集中:
「EX」と「DX」に投資の約半分を振り向け、次世代の稼ぎ頭を育成しています。特にデジタル領域では、ネットワンシステムズの買収により、AI時代のITインフラからサービスまでを一気通貫で提供できる体制が整います。
資本コストを意識した経営:
PBR(株価純資産倍率)1倍超の安定的な維持をめざし、ROE(自己資本利益率)を継続的に高める経営管理を徹底しています。単なる「商社」から、高い付加価値を創出し続ける「事業投資・経営体」への進化が加速しています。
まとめ:この企業を一言で表すなら
住友商事は、規律をもって未来を「仕立て直す」変革者。
「浮利を追わず」の精神で不採算事業を切り分け、
デジタルとグリーンという時代の潮流に全力を注ぐ、意思の強い経営体。
厳格な事業の入れ替えが奏功し、資本効率が一段と高まるこれからの3年間が、
同社の真価を証明するステージとなるでしょう。
企業価値を「構造」から考える
どこに組み込まれ、何によって支えられているか という構造が、 長期的な価値を左右します。
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