【企業図鑑】Hitachi, Ltd.
巨象は、踊り方を覚えた。
「IT×OT×プロダクト」で社会インフラを支配する唯一無二の構造
この企業に注目する理由
── 10年の構造改革を経て完成した「社会イノベーション」のプラットフォーマー
かつての日立製作所は、半導体から家電、発電所までを手掛ける「何でも屋の総合電機」でした。しかし、過去10年以上にわたる痛みを伴う構造改革(上場子会社の売却や事業ポートフォリオの入れ替え)を経て、その姿は劇的に変わりました。
現在の日立は、デジタル(IT)、現場制御(OT)、そして物理的な製品(プロダクト)の3つを垂直統合で提供できる、世界でも稀有な「社会イノベーション企業」です。デジタル化とグリーン化(脱炭素)という世界的な潮流の中で、単なるモノ売りではなく、顧客の課題を解決し続ける「継続課金型の高収益体質」へと変貌を遂げた点に、長期的な勝機があります。
🌏 第1章:どんな企業なのか(輪郭と事業構造)
── 3つのセクターで構成されるグローバル・ソリューション企業
現在の日立の事業は、大きく3つの成長セクターに集約されています。
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① デジタルシステム&サービス (DSS):
ITサービス、クラウド、そして日立の成長エンジンである「Lumada(ルマーダ)」の中核。米GlobalLogic社の買収により、デザイン主導のデジタルエンジニアリング能力を強化しています。 -
② グリーンエナジー&モビリティ (GEM):
送電網(パワーグリッド)、原子力、鉄道システムなど. スイスのABBパワーグリッド事業(現・日立エナジー)や、仏Thales社のGTS部門(鉄道信号)の買収により、グローバルリーダーの地位を確立しています。 -
③ コネクティブインダストリーズ (CI):
エレベーター、産業機器、家電、ヘルスケアなど。製品とデジタルを繋ぎ、現場の最適化を図ります。
※これら全てを横串で通すのが、独自のIoTプラットフォーム「Lumada」です。
💡 第2章:なぜ特別なのか(競争優位の源泉)
GAFAのようなITジャイアントも、Siemensのような産業機器大手も存在しますが、日立が持つ「IT × OT × プロダクト」の組み合わせは、模倣困難な強力な参入障壁です。
🔍 深掘り:なぜ「OT(制御技術)」が重要なのか
IT(情報技術)だけで社会インフラは動きません。電車を定刻通りに走らせる、停電させずに電気を送る、エレベーターを安全に動かす。これらを担うのが「OT(Operational Technology:制御技術)」です。
日立は100年以上にわたり、この「現場のOT」を蓄積してきました。
- IT企業にはできない:物理的な機械や現場の知識がないため、机上の空論になりがち。
- 専業メーカーにはできない:AIやクラウドなどの高度なIT活用が追いつかない。
- 日立だけができる:現場のリアルデータ(OT)を吸い上げ、IT(Lumada)で分析し、プロダクトにフィードバックする循環を作れる。
特に送電事業(HVDC)においては、再エネ普及に伴う世界的な送電網増強の波に乗り、圧倒的なシェアと技術力を持っています。
- ✅ 現場(OT)とデジタル(IT)の融合による独自ソリューション
- ✅ Lumadaによる「顧客データの蓄積」と「リカーリング(継続課金)化」
- ✅ 世界規模のM&A成功によるグローバル・ネットワーク(特にエネルギー・鉄道)
⚙️ 第3章:課題と向き合い方(グローバル経営の深化)
構造改革は完了しましたが、次のフェーズは「グローバルでの有機的な成長」です。巨額買収した海外企業(GlobalLogic、日立エナジー、Thales GTS)を、いかに「One Hitachi」として統合し、シナジーを生み出すかが課題です。
🤔 投資家が視るべき「PMI(統合)の手腕」
日立はこれまで、日本的雇用慣行から脱却し、「ジョブ型雇用」への転換を急ピッチで進めてきました。これは、グローバルな人材獲得競争に勝つための必須条件です。
Thales社のGTS部門買収(鉄道信号事業)においても、単なる規模拡大ではなく、日立の持つ車両・ITと、Thalesの持つ信号技術を組み合わせることで、MaaS(Mobility as a Service)市場での支配力を高めようとしています。この「組み合わせる力」が機能し続けるかどうかが、今後の利益率(Adjusted EBITA)向上の鍵を握ります。
🌿 第4章:未来像(プラネタリー・バウンダリーへの挑戦)
日立が描く未来は「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」を守りながら、人々の「ウェルビーイング」を実現することです。
具体的には、生成AIの社会実装や、データセンターの省エネ化、そして世界的な電力ネットワークの構築です。2024中期経営計画では、Lumada事業の売上収益を拡大し、Adjusted EBITA率12%の達成を掲げています。これは、かつての「低収益な製造業」からの完全な脱却を意味し、グローバル水準のテクノロジー企業としての評価を固めるフェーズに入っています。
まとめ:この企業を一言で言うなら
日立製作所は、デジタルの頭脳とフィジカルの身体を持つ
「社会インフラのOS(基本ソフト)」である。
もはや「日本の電機メーカー」という枠には収まりません。
社会課題がある限り稼働し続ける、極めて強靭な収益エンジンを持ったグローバル企業です。
企業価値を「構造」から考える
どこに組み込まれ、何によって支えられているか という構造が、 長期的な価値を左右します。
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