過去20年の株式相場の中心点アーカイブ
(2006–2025)
このページでは、過去およそ20年の株式相場について、 「その年、市場は何を軸に回っていたのか」を中心点(重心)という視点で整理します。 出来事の年表ではなく、 市場参加者の資金と関心がどこに集中していたかを俯瞰するための資料です。
株式相場の中心点サマリー(2006–2025)
| 年 | 相場の中心点 | 支配的ナラティブ | 主要指標 |
|---|---|---|---|
| 2025 | 分散投資・金 | 「米国集中はリスク」 |
金価格:過去最高値更新 米国外株式がアウトパフォーム トランプ第2期政権の保護主義政策への警戒 |
| 2024 | AIインフラ・電力・SMR | 「AIは電気を食う」 |
NVIDIA時価総額:3兆ドル突破 SMR関連投資急増 |
| 2023 | 生成AI・半導体 | 「次の成長エンジン」 |
生成AI利用者数が急増(ChatGPTが象徴的存在に) NVIDIA株価:+239% |
| 2022 | インフレ・資源・金利 | 「成長より耐性」 | • 米インフレ率:9.1%(6月、40年ぶり) • FF金利:0%→4.25-4.5%へ急上昇 |
| 2021 | NFT・メタバース・暗号資産 | 「Web3の夢」 | • ビットコイン最高値:776万円(11月) • NFT取引量:上半期25億ドル |
| 2020 | DX・巣ごもり・GAFAM | 「止めない経済」 | • 世界経済成長率:−4.4% • Zoom株価:+396% |
| 2013–2019 | GAFAM・成長株 | 「低金利×テクノロジー=高評価」 | • QE3:2012年9月〜2014年10月 • S&P500: 2013年+29.6% |
| 2009–2012 | 金融正常化期待・QE相場 | 「最悪期は脱した」 | • QE1:1.7兆ドル(2008年11月〜) • QE2:6000億ドル(2010年11月〜) |
| 2008 | 信用不安・金融システム崩壊 | 「誰も信用できない」 | • リーマン・ブラザーズ破綻(9月15日) • 日経平均最安値:7,162円(10月27日) |
| 2007 | 信用収縮の始まり | 「サブプライムは限定的?」 | • BNPパリバ・ショック(8月9日) • 日経平均最高値:18,261円(7月9日) |
| 2006 | 信用拡張・住宅バブル絶頂 | 「リスクは管理可能」 | • 米住宅価格:ピーク到達(第2四半期) • 住宅ローン証券化市場急拡大 |
📖 時期別詳細解説
🏠 2006–2007:住宅バブルと崩壊の予兆
2006年:信用拡張の絶頂
市場の中心点: 米国住宅市場への過剰な信頼とレバレッジ投資
- 住宅価格: 1997年から2006年の間に124%上昇
- 融資基準の崩壊: 「NINJA(No Income, No Job, No Assets)ローン」など、返済能力のない層への融資が横行
- 証券化の罠: サブプライムローンをRMBS(住宅ローン担保証券)→CDO(債務担保証券)に組成し、世界中に販売
- 第2四半期: 米住宅価格がピークをつけ、下落開始
2007年:信用収縮の始まり
市場の中心点: 「サブプライム問題は限定的」という楽観論の崩壊
- 3月13日: 米大手ローン会社ニューセンチュリー・フィナンシャルがNYSE上場廃止
- 6月: ベア・スターンズ傘下ヘッジファンド2本が経営危機
- 7月9日: 日経平均が18,261円でITバブル後最高値を記録
- 8月9日: BNPパリバ・ショック。仏BNPパリバが傘下ファンド3本の解約・返金停止を発表、ECBが15兆円の緊急資金供給
- 8月15-17日: 東京市場で3日間で1,570円の下落
- 10月9日: NYダウが史上最高値14,164ドルを記録(危機直前の最後の輝き)
💥 2008:金融システム崩壊
市場の中心点:「誰も信用できない」—銀行間市場の凍結
- 3月: ベア・スターンズ破綻、JPモルガンが1株10ドル(2007年1月は170ドル)で救済買収
- 7月: 米住宅公社ファニーメイ・フレディマック経営危機、公的管理下に
- 9月15日: リーマン・ブラザーズ破綻。総資産約6,130億ドル、史上最大の倒産
- 9月16日: AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)が政府管理下に
- 10月: 米欧主要国が協調して金融機関への公的資本注入を発表
- 10月27日: 日経平均が7,162円でバブル崩壊後最安値を更新
- 11月: FRBがQE1(量的緩和第1弾)を開始
影響: 世界の金融機関がサブプライム関連で総額数兆ドルの損失。銀行間の信用が消失し、短期金融市場が機能不全に
💊 2009–2012:量的緩和(QE)相場と回復期
市場の中心点: 「中央銀行が支えてくれる」—史上初の大規模QE実験
QE(量的緩和)の展開
- QE1(2008年11月〜2010年6月): 総額1兆7,250億ドル。住宅ローン担保証券(MBS)と政府機関債を大量購入。金融システムの安定化が最優先
- QE2(2010年11月〜2011年6月): 総額6,000億ドル。米国債を購入。景気回復ペースの鈍化に対応。株式市場には効果があったが、雇用には限定的
- QE3(2012年9月〜2014年10月): 総額1兆3,600億ドル以上。月額400億ドル(後に850億ドル)の買い入れ。失業率6.5%まで継続する「無期限」緩和。アナウンスメント効果を狙った政策
市場への影響
- 株価: QE実施期間中、S&P500が大幅上昇。2009年3月の底値666ポイントから回復
- 金利: 長期金利が歴史的低水準に誘導され、債券・不動産価格を押し上げ
- 資産効果: 富裕層の資産が増加する一方、実体経済への波及は限定的
📱 2013–2019:GAFAM一強時代と「低金利×テクノロジー」相場
市場の中心点: 「成長株は何でも買い」—PER拡大による米国株独走
2013年:金融緩和継続とテーパリング懸念
- 5月22日: バーナンキFRB議長がQE縮小の可能性に言及「バーナンキ・ショック」
- 結果: S&P500は+29.6%と大幅上昇(年間)
2014–2016年:原油急落とチャイナショック
- 2014年10月: QE3終了。FRBのバランスシートは4.5兆ドルに
- 2015年: 原油価格が100ドル→30ドル台へ急落、中国経済減速懸念
- 2016年: Brexit、トランプ大統領当選で不確実性上昇も、株価は堅調
2017–2019年:トランプ・ラリーと米中貿易戦争
- 2017年: トランプ減税で法人税率35%→21%、米国株が+19.4%
- 2018年: 米中貿易戦争激化、10月に世界同時株安
- 2019年: FRBが3回利下げ、株価回復。GAFAM時価総額が5兆ドル突破
特徴: 超低金利環境下で、将来のキャッシュフローを高く評価する市場。GAFAMへの資金集中が加速し、米国株が世界を牽引
🤖 2020–2025:パンデミック、AI革命、そして地政学リスク
- 2020年:史上最大の金融緩和とDX加速
-
3月:コロナショックでS&P500が1ヶ月で34%下落
3月:FRBがゼロ金利復活、QE4開始(無制限)
テック株急騰:Zoom +396%、Amazon +76%、テスラ +743% - 2021年:過剰流動性バブル
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暗号資産・NFT・メタバースへの投機熱
ミーム株(GameStop等)の乱高下
SPACブーム(特別買収目的会社による上場) - 2022年:金利上昇とバリュエーション調整
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FRBが計425bpの急速利上げ
成長株が軒並み50-80%下落
エネルギー・防衛株が優位に - 2023年:生成AI革命元年
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ChatGPTが公開5日で100万人、2ヶ月で1億人突破
NVIDIA株価が+239%、時価総額1兆ドル突破
「AI銘柄」への資金集中が加速 - 2024年:AIの現実制約を認識
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データセンター電力需要が急増
Google、Amazon、MetaがSMR(小型原子炉)投資を発表
「AIには莫大な電力と資本が必要」という現実が顕在化 - 2025年:地政学リスクと分散投資
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トランプ第2期政権の保護主義的政策への警戒
米国株集中リスクの見直し
金価格が過去最高値を更新
欧州・新興国・コモディティへの資金分散
💡 中心点を動かした主な出来事
- 2006年:米住宅価格がピークをつけ、住宅バブル崩壊が始まる
- 2007年8月:BNPパリバ・ショックで信用収縮が顕在化
- 2008年9月:リーマン・ブラザーズ破綻、100年に一度の金融危機
- 2008年11月:FRBがQE1開始、史上初の大規模量的緩和
- 2009–2012年:QE1, QE2による金融相場。実体経済より市場が先行
- 2012年9月:QE3開始、無期限緩和で株価を強力に下支え
- 2013–2019年:低金利環境下でGAFAMが時価総額を急拡大
- 2020年3月:コロナショックと史上最大規模の金融・財政出動
- 2021年:過剰流動性によるリスク資産バブル(NFT、暗号資産、メタバース)
- 2022年:インフレ率9.1%到達、FRBが40年ぶりの急速利上げ
- 2022年11月:ChatGPT公開、生成AIが社会現象に
- 2023年:生成AIブームでNVIDIA等の半導体株が急騰
- 2024年:AIの電力制約が顕在化、SMR投資ブーム
- 2025年:トランプ政権再始動、米国集中から分散投資への転換
💼 この20年間から得られる投資家への示唆
1. 相場には必ず「中心点」が存在する
振り返れば、どの年にも資金と関心が集中する明確なテーマがありました。それは住宅、金融システム、量的緩和、GAFAM、AI、そして地政学リスクと変遷してきました。
2. 「常識」は短期間で覆る
- 2006年「住宅価格は下がらない」→2007年崩壊
- 2019年「低金利は永遠」→2022年急速利上げ
- 2021年「暗号資産は未来」→2022年大幅下落
- 2023年「AIだけ買えばいい」→2025年分散投資へ
3. 金融政策が相場の前提条件を作る
- QE期(2008-2014、2020-2022):リスク資産が上昇
- QT期・金利上昇期(2022):成長株が崩壊
- 低金利期(2013-2021):PER拡大が続く
4. バブルは必ず崩壊する
住宅バブル(2006)、NFT/メタバースバブル(2021)、AIバブル(?)
「今回は違う」という言葉が出たら要注意
5. 危機は予想外の形でやってくる
- 2007年「サブプライムは限定的」→2008年リーマンショック
- 2020年「コロナは一時的」→世界経済が−4.4%
- 次の危機は予測できないが、備えることはできる
📦 市場観測アーカイブについて
このページは、過去の市場環境や投資テーマを
「当時の前提のまま」保存するためのアーカイブです。
正解・不正解を判定するためではなく、
何を信じ、どこで前提が変わったのかを振り返ることを目的としています。
▶ 過去の市場テーマ記事一覧(準備中)
