金・コモディティはなぜ選ばれてきたのか──通貨不信と価値保存の「避難先」

通貨の外側にある価値としての金・実物資産

通貨の信用と価値保存の構造|第3話

インフレが進み、通貨の信用が揺らぎ始めると、人々は同じ問いに行き着きます。
「では、価値をどこに退避させればいいのか?」

その答えとして、何百年、何千年も選ばれてきたのが
金(ゴールド)とコモディティ(実物資産)です。

通貨と実物資産の決定的な違い

通貨と金・コモディティの最大の違いは、
「誰かの信用を必要とするかどうか」です。

  • 法定通貨:国家・中央銀行・制度への信用に依存
  • 金・コモディティ:物理的な存在と希少性そのものが価値

通貨は「約束」であり、実物資産は「現物」です。
信用が揺らぐ局面では、この違いが決定的になります。
約束は破られることがあっても、現物は消えないからです。

金が「究極の価値保存」とされてきた理由

金は配当も利息も生みません。
それでもなお、危機のたびに選ばれてきました。

  • 供給量が急増しない(人為的に刷れない)
  • 腐らない・劣化しない
  • 世界共通で価値が理解されている
  • 誰の負債でもない

金は「通貨の外側にある価値」です。
だからこそ、通貨不信の局面で力を発揮します。

コモディティは「生活に直結した価値」

コモディティとは、エネルギー・食料・金属など、
人間の生活や経済活動に不可欠な資源です。

インフレ局面では、

  • 通貨価値は下がる
  • しかし生活必需品の需要は消えない

その結果、モノの価格だけが上がるという現象が起こります。
これが「インフレ=コモディティ上昇」と言われる構造です。

ドル安とコモディティはなぜ連動するのか

多くのコモディティはドル建てで取引されています。

そのため、

  • ドルの信用が低下する
  • ドルの購買力が下がる
  • 同じ資源を買うのに、より多くのドルが必要になる

結果として、コモディティ価格は上昇しやすくなるのです。

金とコモディティは「投資」ではなく「保険」

ここで重要なのは視点です。

金やコモディティは、

  • 株のように成長を期待する資産ではない
  • 高配当を生む資産でもない

彼らの役割はただ一つ。
通貨と金融システムが壊れたときの「価値保存」です。

🔎 補足|金・コモディティを理解するための重要な視点

本記事では、金やコモディティを「価値保存資産」として扱っていますが、
より正確に理解するためには、次の点も押さえておく必要があります。

  • 短期的には価格変動が大きい
    長期的には購買力を守る役割を果たしてきましたが、短期では投機マネーの影響を受け、株式やリスク資産のような値動きをすることもあります。
  • 「保有・移動のコスト」がかかる
    現物の金やコモディティは、保管場所や保険料が必要です。また、物理的な重さがあるため、大量の価値を瞬時に国境を越えて移動させることは困難です。
    (※この「物理的制約」を解決しようとしたのが、後のデジタル資産です)

では、もし
「金でも国家でもない価値保存手段」が現れたら?

次回は、中央を信用しないという思想から生まれた
暗号資産(ビットコイン)の誕生を扱います。

▶ 次の記事:④ 暗号資産の誕生──中央から自由へ