アルファは偶然じゃない:ファクター投資で「超過リターンの正体」を読み解く

アルファを「運」ではなく「構造」で理解するための投資フレーム

前回の記事では、投資成績を「ベータ(市場の波)」と「アルファ(超過リターン)」に分解して考える視点を整理しました。
では、ここで一つの疑問が浮かびます。
「アルファって、結局なにから生まれるの?」

運が良かっただけなのか、それとも再現性のある仕組みが存在するのか。
この問いに、学術的・実務的な答えを与えたのがファクター投資です。

ファクター投資とは何か?

ファクター投資とは、長期的にリターンと関係があると確認されてきた「特性(因子)」に注目して投資する考え方です。
個別銘柄を当てにいくというより、

  • どんな性質の銘柄群が
  • なぜ報われやすいのか

を構造的に捉えます。言い換えるなら、「アルファを分解して、誰でも使える形にしたもの」とも言えます。

なぜCAPMだけでは説明できなかったのか

CAPMでは、リターンは基本的に市場リスク(ベータ)に比例すると説明されます。しかし現実には、

  • 同じベータでも成績が大きく違う
  • 低ベータなのに高リターンの銘柄群が存在する

といった現象が数多く確認されました。この「説明できない差」を体系化したのが、ファクターモデルです。

代表的な5つのファクター

① サイズ(Size)
時価総額が小さい企業は、長期的に高いリターンを得やすいという傾向です。
理由:情報が行き届きにくい、倒産リスクが高い、値動きが荒い = 投資家が敬遠しがちな分、リスクプレミアムが存在する

② バリュー(Value)
割安な企業(低PBR・低PER)は、長期で報われやすい。
市場はしばしば、一時的な業績悪化、不人気セクターを過剰に嫌います。その歪みを拾うのがバリューファクターです。

③ モメンタム(Momentum)
最近まで好調だった銘柄は、しばらく好調が続きやすい。人間の行動バイアス(追随・過小反応)をそのまま反映したファクターとも言えます。
※短〜中期で効果が出やすい一方、反転局面では急激な崩れも起こりやすい点に注意が必要です。

④ クオリティ(Quality)
財務が健全で、収益性が高い企業は、下落局面に強い。
例:ROEが高い、負債が少ない、利益のブレが小さい。守備力の高いファクターとして、長期投資家との相性が良いのが特徴です。

⑤ 低ボラティリティ(Low Volatility)
値動きが小さい銘柄の方が、結果的に高いリターンを出す。
一見すると直感に反しますが、レバレッジ制約、派手さへの偏好といった市場構造が背景にあると考えられています。

ファクター=新しいベータ

重要なのは、ファクターリターンは「偶然のアルファ」ではなく、再現性のあるリスクプレミアムとして扱われている点です。
現在では、市場ベータ、サイズ、バリュー、モメンタム、クオリティなどを組み合わせて、多因子モデルとして運用するのが一般的です。

個人投資家はどう使うべきか?

① 無意識の偏りを知る
まず重要なのは、自分のポートフォリオがどのファクターに偏っているかを理解することです。

② 市場環境で期待値を調整する
ファクターにも得意・不得意な局面があります。

  • 強気相場:モメンタム・高ベータ
  • 不安定相場:クオリティ・低ボラ
  • 長期停滞:バリュー

「当てにいく」のではなく、期待値の分散として使うのが現実的です。

③ インデックス+ファクターで考える
個人投資家にとって最も再現性が高い形は、コア:市場インデックス(ベータ)、サテライト:ファクターETF・投信という組み合わせです。

注意点|万能ではない

  • 数年単位でアンダーパフォームすることがある
  • 人気化すると効果が薄れる可能性
  • 短期売買とは相性が悪い

ファクター投資は、長期・分散・忍耐が前提です。

まとめ|アルファを構造で理解する

ファクター投資は、アルファを分解し、再現可能な形に落とし、長期投資に組み込むための思考フレームです。

ベータ(市場)を土台に、ファクターという構造的上乗せをどう組み合わせるか。
ここまで理解できれば、投資は「当て物」から完全に卒業です。

理論を理解しても、

実際のポートフォリオは人によって異なります。
年齢、収入、リスク許容度、価値観。

どれが違っても、正解は一つではありません。

参考として、
私自身がこれまで解説してきた考え方を
どうポートフォリオに落とし込んでいるのかを
下記にまとめています。

「答え」ではなく、一つの実装例としてご覧ください。

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