金利が高いのに株が上がるのはなぜか──相場の裏側で効く「実質金利」を基礎から整理する
株式市場を語るとき、多くの人が「政策金利」や「長期金利」に注目します。 しかし、実際に株価の評価を左右しているのは 名目金利ではなく「実質金利」 です。
実質金利を理解すると、次のような疑問が一気に整理できます。
- なぜ高金利なのに株価が上がり続けたのか
- なぜ割高と分かっていても相場が崩れなかったのか
- なぜ利下げ前から株価が動き出すのか
本記事では、名目金利では見えない「株価を本当に動かす力」として、 実質金利の仕組み・歴史・投資への活かし方を整理します。
実質金利とは何か?基本定義
実質金利とは、名目金利からインフレ率を差し引いた金利です。
数式で表すと、以下のようになります。
実質金利 = 名目金利 − インフレ率
具体例で理解する
- 名目金利:5%
- インフレ率:3%
この場合の実質金利は、
5% − 3% = 2%
つまり、「お金を貸した・預けたときに、本当に増える力」が2%という意味です。
株式市場は この「実質的なお金の価値」に最も敏感に反応します。
本記事では実質金利を「名目金利 − インフレ率」として説明していますが、 より厳密には以下の関係式で表されます。
(1 + 名目金利) = (1 + 実質金利) × (1 + インフレ率)
この式を展開すると、
名目金利 ≒ 実質金利 + インフレ率
となります。 実務上は「実質金利 × インフレ率」の項が十分に小さいため、 名目金利 − インフレ率という単純化で問題ありません。
※ 本記事では投資判断への応用を重視し、直感的に理解しやすい表現を採用しています。
なぜ名目金利より実質金利が重要なのか
お金の価値は「金利」ではなく「購買力」で決まる
仮に金利が5%でも、物価が年5%上昇していれば、 お金の実質的な価値は増えていません。
投資家が判断しているのは、
- お金を現金・債券で持つべきか
- それとも株式などの実物資産に逃がすべきか
という相対的な選択です。
実質金利と資産選好の関係
| 実質金利環境 | 投資家の行動 | 株式市場 |
|---|---|---|
| 実質金利が高い | 現金・債券が有利 | 株価に逆風 |
| 実質金利が低い | リスク資産に資金流入 | 株価に追い風 |
| 実質金利がマイナス | 現金の価値が目減り | 株価が押し上げられやすい |
実質金利と株価の歴史的関係
リーマン後〜コロナ後の共通点
リーマンショック後、そしてコロナショック後に共通していたのは、
- 金融緩和による低金利
- インフレ率の上昇
- 実質金利の長期マイナス
この環境下では、
- 現金を持つこと自体がリスク
- 株式や不動産など実物資産への資金流入
が起こりやすくなります。
「割高でも上がり続ける相場」の正体
PERやPBRだけを見ると、
- 明らかに割高
- 理論的には説明できない
相場局面でも、実質金利がマイナスであれば、
「他に行き場がないお金」が株式市場を押し上げ続けます。
これが、現代相場の最大の特徴です。
2020年代の相場を動かした実質金利
コロナ後のインフレと金融政策
- 大規模金融緩和
- 財政出動
- 供給制約によるインフレ
結果として、
- 名目金利は上昇
- しかしインフレ率も高水準
実質金利は長期間マイナス圏に留まりました。
FRBが本当に恐れていたもの
中央銀行が警戒するのは、
- 名目金利の水準
- ではなく
- 実質金利が過度にマイナスになること
実質金利のマイナスが続くと、
- 過剰なリスクテイク
- 資産バブル
- 格さ拡大
を招きやすくなるためです。
投資判断にどう活かすべきか
必ずセットで見る3指標
- 名目金利(FF金利・長期金利)
- インフレ率(CPI・PCE)
- 実質金利(差分)
実質金利別の基本戦略
| 実質金利 | 投資スタンス |
|---|---|
| プラス圏 | 株式比率を抑制、債券重視 |
| ゼロ近辺 | バランス型、選別投資 |
| マイナス圏 | 株式・実物資産に追い風 |
注意点:実質金利だけでは不十分
実質金利は非常に強力な指標ですが、
- 企業業績
- 流動性(中央銀行バランスシート)
- 地政学リスク
と必ず組み合わせて判断する必要があります。
まとめ:実質金利は「相場の前提条件」
- 株価を動かすのは名目金利ではない
- 本質は「インフレを差し引いたお金の価値」
- 実質金利がマイナスなら、株価は押し上げられやすい
相場を予測するよりも、 「なぜ今この水準なのか」を説明できることが、 長期投資では最大の武器になります。
実質金利は、そのための最重要な前提条件のひとつです。
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