日本の貿易戦略の新局面:「日・メルコスール」パートナーシップの全体像

資源・食料安保における南米の位置づけ

🤝 1. ニュースの要点:2026年から始まる実務レベルの協議

2025年12月20日、日本とメルコスール(南米南部共同市場)は「戦略的パートナーシップ枠組み」を正式に立ち上げました。これは3月の首脳会談で合意されたアクションプランを踏まえた動きです。

注目されるのは今後の進行ペースです。2026年早期には第1回会合が予定されており、貿易・投資の促進に加え、重要鉱物のサプライチェーンやGX(グリーントランスフォメーション)に関する具体策が協議される見通しです。経済界(経団連)からも「日本・メルコスールEPA」の早期実現を求める共同声明が発表されており、官民での連携が進みつつあります。

🌎 2. メルコスール:成長余地を残す大規模市場

メルコスールは域内人口約2.8億人、GDP約3兆ドルを有する経済圏です。一方で、日本企業の進出状況を見ると、依然として限定的な水準にとどまっています。

メキシコとの比較から見える進出余地

  • 進出社数の差:メルコスール全体の日系企業数は約617社にとどまります。一方、人口・GDPともにブラジルを下回るメキシコには1,117社が進出しています(JETRO調査)。
  • 貿易シェア:日本の対メルコスール貿易比率は、輸出0.6%、輸入1.2%(2017年比)と低水準にあり、今回の枠組みが関係拡大の契機となる可能性があります。
  • ブラジルの位置づけ:メルコスールの人口・GDPの7割以上を占めるブラジルは、日本にとって南米戦略の中心的存在です。

🔋 3. 日本側の関心分野:資源確保と産業基盤

日本政府および企業が重視しているのは、完成品の輸出拡大だけでなく、「資源の安定確保」と「技術・事業モデルの展開」です。

⛏️1. 重要鉱物のサプライチェーン(三井物産の取り組み)

EVバッテリーに不可欠なリチウムについて、三井物産はブラジルのリチウム鉱区(米Atlas Lithium)に出資参画し、年間30万トン規模の生産を見込んでいます。また、鉄鉱石大手のVale社との協業を通じ、物流やインフラ分野にも関与しています。アルゼンチンやボリビアを含む「リチウム・トライアングル」との連携は、経済安全保障の観点からも重要性が高まっています。

🚗2. 自動車産業の展開(トヨタ・日産など)

トヨタ自動車はブラジルに3,300億円(110億レアル)規模の投資を計画しています。エタノール混合燃料を活用するハイブリッド車など、現地の資源条件に対応した車種展開を進めています。日産もアルゼンチンで「フロンティア」の生産体制を拡充するなど、南米をグローバル戦略の一拠点として位置づけています。

🌾3. 食料安全保障への寄与

南米は、大豆、トウモロコシ、鶏肉などの主要供給地として、日本の食料調達において重要な役割を担っています。味の素(現地展開50年以上)をはじめとする食品企業も、長期的な事業基盤を築いています。

⚠️ 4. 課題:EUとの競争と関税制度

一方で、日本が直面する課題も明確です。

  • EU・メルコスールFTAの進展:2024年12月、EUとメルコスールがFTA交渉を妥結しました。日本企業の競争環境を維持するためにも、日本・メルコスールEPAの交渉加速が課題となります。
  • 高関税構造:完成車などに高い関税が課されており、輸出主導ではなく、現地生産を前提とした戦略が求められます。

🚀 5. まとめ:南米市場との関係深化に向けて

2025年3月の「日・ブラジル経済フォーラム」では、官民合わせて84件の覚書が締結されました。三井物産、トヨタ、コマツ、味の素などが、すでに具体的な取り組みを進めています。

2026年以降の実務協議を通じて制度面の調整が進めば、日本の技術力(アグリテックや鉱山自動化)と南米の資源基盤が結びつき、中長期的な経済関係の深化が期待されます。今後の動向を継続的に注視する必要があります。

出典・参考情報(信頼できるソース)

  • 外務省:「日・メルコスール戦略的パートナーシップ枠組み」の立ち上げ(2025年12月20日)
  • 経済産業省:日・ブラジル経済フォーラム報告(2025年3月)
  • 経団連:日本メルコスールEPAの早期実現を求める共同声明(2025年3月26日)
  • JETRO:日メルコスール経済関係と、メルコスールの制度・枠組み概説
  • 日本経済新聞:日本と南米5カ国「メルコスル」が新枠組み(2025年12月21日)
  • 三井物産・トヨタ自動車:各社プレスリリース

南米は、それ単体で完結するテーマというより、
アフリカやインド、中東とつながる日本の「南の経済圏」戦略の一部として見ると、 より全体像が見えてきます。

▶︎ こうした流れをまとめて整理した記事はこちら。
🔗 2025年 世界貿易の構造転換 ― グローバル・サウスの台頭

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投資歴25年の個人投資家Sakumiが執筆。初心者向けに実体験に基づいた投資ノウハウや口座選びのポイントを発信中。

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