ラピダス(Rapidus)と次世代半導体戦略
― 2nm量産は「日本復活」なのか、それとも供給網の補完なのか
ラピダス(Rapidus)は、日本の半導体産業がかつて失った「最先端ロジック」分野への再挑戦として誕生しました。
北海道千歳市で進む工場建設と、IBM・imecとの国際連携により、いきなり2nm世代から参入するという極めて異例の戦略を採っています。
本記事では、「成功するか・失敗するか」という二項対立ではなく、
ラピダスは何を狙い、何を狙っていないのかを構造的に整理します。
TSMCと同じ土俵では戦わない
ラピダスは、TSMCの代替を目指す存在ではありません。量・コスト・実績のすべてで、TSMCは圧倒的な先行者です。
ラピダスが目指しているのは、「少量・高付加価値・短納期」という別の登山ルートです。
ビジネスモデルの違い
- TSMC:大量生産・汎用設計・圧倒的スケール
- Rapidus:専用設計・短TAT・顧客密着型(RVS構想)
RVS(Rapidus Valued Services)は、設計・製造・実装を近接させることで試作から実装までの時間短縮を狙う構想です。
ただし、このモデルが本当に機能するかどうかは、量産フェーズに入って初めて検証されます。
「日の丸」ではなく、国際分業の結晶
ラピダスは純国産技術ではありません。空白期間を埋めるため、意図的に日米欧の研究資産を統合しています。
- IBM(米国):2nm GAAプロセスの基礎技術
- imec(ベルギー):EUVを含む最先端研究基盤
- 日本企業群:装置・材料・計測の実装力
これは「日本単独復活」というよりも、地政学リスクを分散するための供給拠点構築と捉える方が現実的です。
なぜ今、2nmなのか
最大の背景は、最先端ロジック半導体の地理的集中リスクです。
現在、2nmクラスを担える生産能力は台湾・韓国に極端に集中しています。世界経済にとって、「代替拠点を持たないこと」自体がリスクになりつつあります。
日本政府による巨額支援は、産業政策というよりも安全保障インフラ投資の性格が強いといえます。
ラピダスがもたらす波及効果
ラピダスの成否とは別に、プロジェクト自体が日本の装置・材料企業に実需をもたらします。
- 前工程装置(露光・洗浄・成膜)
- 検査・計測(EUVマスク関連)
- フォトレジスト・シリコンウェハ
- 先端パッケージ用基板
これらはラピダス専用ではなく、世界の最先端投資全体に共通する需要です。
最大のリスクは「技術」より「経営」
技術的課題以上に重要なのは、事業として成立するかどうかです。
- 初期歩留まりの低さ
- 顧客獲得の不確実性
- 民間資金を呼び込めるか
政府支援は初期段階を支えますが、長期的には自立した収益モデルが不可欠です。
ロードマップの意味をどう読むか
2nm → 1.4nmという計画は、技術的野心を示す一方で、投資継続の前提条件でもあります。
重要なのは、予定通り進むかどうかではなく、途中でどの程度の実績を積めるかです。
投資家が見るべきポイント
ラピダス本体は未上場であり、直接投資はできません。
注目すべきは、最先端投資の増加が必然的に波及する領域です。
- 装置・材料で世界シェアを持つ企業
- 水・電力・インフラ関連
- 先端パッケージ・検査分野
ラピダスは、成功すれば象徴的な存在になりますが、投資判断では「成功しても失敗しても需要が残る場所」を見極めることが重要です。
まとめ
ラピダスは、日本半導体復活の物語というより、供給網を分散させるための現実的な試みです。
期待と不安が交錯するプロジェクトだからこそ、
感情ではなく「どこまで機能すれば十分なのか」という視点で見る必要があります。
