半導体メモリの最終進化形──MRAMが変える「記憶」の常識
「夢のメモリ」はどこまで現実になったのか
MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)は、従来の「電気」ではなく磁気(スピン)で情報を記憶する次世代半導体メモリです。
不揮発性(電源オフでも保持)、高速動作、高耐久性という特性から、長年「ユニバーサル・メモリ」として期待されてきました。
そして2025年以降、AI・EV・車載SoCの高度化を背景に、MRAMは“研究テーマ”から“実装技術”へと段階を進めています。本記事では、技術的優位性・市場拡大の実態・投資家が警戒すべき限界を整理します。
1. なぜMRAMなのか──メモリ階層の限界
現在のコンピュータは、高速だが揮発性のSRAM/DRAMと、低速だが不揮発性のNANDフラッシュを組み合わせて動いています。MRAMはこの分断を埋め、「高速 × 不揮発 × 高耐久」という特性で、特に組み込み領域(車載・産業・IoT)から置き換えを進めています。
主要メモリ性能比較
| 種類 | 揮発性 | 速度 | 耐久性 | 主用途 |
|---|---|---|---|---|
| SRAM | 揮発 | 超高速 | 無制限 | CPUキャッシュ |
| DRAM | 揮発 | 高速 | 無制限 | 主記憶 |
| NAND | 不揮発 | 低速 | 10³〜10⁵回 | ストレージ |
| MRAM | 不揮発 | 超高速 | 10¹⁰回以上 | 車載・制御 |
2. 技術進化の現在地
- 5nm eMRAM:TSMC・Samsungが開発表明。SoC統合へ。
- SOT-MRAM:書き込み電力を大幅削減。SRAM代替候補。
- 耐熱性:150℃超動作が可能。EV・産業用途に適合。
3. 市場規模の現実
- 2024年:約30〜42億ドル
- CAGR:30%前後
- 2034年予測:最大847億ドル
※eFlash代替とAI・車載ニーズが牽引。
4. 日本企業のポジション──「静かな勝者」
この分野で特筆すべきは、日本企業の実装力です。
- ルネサス:1GHz動作MRAMマイコン(2025年)を発表
- 車載・産業用途:信頼性重視市場で先行
- 研究→製品:量産までの距離が短い
5. 投資視点の整理──「万能メモリ幻想」を捨てる
- 大容量ストレージ用途ではNANDの優位は揺らがない
- 製造コストと密度の壁は依然として存在
- 用途は「置き換え」ではなく「最適配置」
MRAMは革命ではなく、
半導体構造を静かに更新する戦略技術です。
主要出典:TSMC / Samsung Roadmap, Renesas IR, IMARC Group, Precedence Research, 2025
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