Grupo Cibest S.A.(CIB):コロンビア経済を支える「ハイブリッド金融プラットフォーム」

【企業図鑑】Grupo Cibest S.A. (CIB)
デジタルとリアルの「ハイブリッド包囲網」
コロンビア経済の心臓部を握る、伝統的銀行とフィンテックの融合体

この企業に注目する理由

── 伝統的大手銀行が、自ら「破壊的イノベーション」を成功させた稀有な例

通常、大手銀行はフィンテック企業の台頭に苦しめられます。しかしGrupo Cibestは、自社で立ち上げたデジタルプラットフォーム「Nequi(ネキ)」を国民的アプリへと成長させ、2,000万人以上のユーザー(コロンビア人口の約40%)を抱えることに成功しました。

伝統的な「信頼・資本力」と、フィンテックの「利便性・データ」を併せ持ち、コロンビアおよび中米地域で圧倒的なエコシステムを構築しています。高金利環境下でも利益を確保する底堅さと、デジタルによる成長性を兼ね備えたハイブリッドな構造が注目点です。

🏦 第1章:どんな企業なのか(輪郭と事業構造)

── コロンビア最大の金融グループにして、地域経済のインフラ

Grupo Cibestは、149年の歴史を持つコロンビア最大の金融機関であり、同国市場シェアの約20%以上を握っています。事業はコロンビア国内(利益の大部分を創出)に加え、パナマ、グアテマラ、エルサルバドルといった中米地域でも展開しています。

  • コロンビア事業(Core): 個人・法人向け銀行業務、住宅ローン、SME(中小企業)支援など。物理店舗とデジタルチャネルの双方で顧客をカバー。
  • Nequi(Digital): 手数料無料の送金・決済アプリから始まったデジタルプラットフォーム。単なるウォレットを超え、小口融資や決済のエコシステムとして機能し、3Q25時点で2,080万人のユーザーを擁します。
  • 中米事業(International): パナマ(Banistmo)、グアテマラ(BAM)、エルサルバドル(Bancoagrícola)での銀行業務。地理的なリスク分散の役割も担います。
足元の業績構造(2025年3Q):
当四半期の純利益は1.5兆コロンビアペソ(約3.4億ドル)で、株主資本利益率(ROE)は15.6%でした。金利低下局面において純金利マージン(NIM)は6.3%と前年比で縮小傾向にありますが、手数料収入の増加やコスト管理により安定した収益性を維持しています。

🏰 第2章:なぜ特別なのか(競争優位の源泉)

Grupo Cibestの強さは、既存の銀行業務という「守り」と、デジタルプラットフォームによる「攻め」が相互に補完し合っている点にあります。

📱 深掘り:「Nequi」による市場の再定義と包囲

多くの銀行がデジタルトランスフォーメーション(DX)に苦戦する中、Grupo Cibestは別ブランドとして立ち上げた「Nequi」で成功を収めました。

  • 圧倒的なユーザー基盤: 2,080万人のユーザーを持ち、コロンビアの成人の大部分をカバーしています。これにより、決済データの収集能力において他社を圧倒しています。
  • 低コストな預金獲得: Nequiの預金残高は3.4兆ペソに達し、その多くが低コストの資金調達源となっています。これは高金利環境下での銀行全体の利ざや確保に貢献しています。
  • 収益化の進展: 当初はユーザー獲得優先でしたが、現在は決済機能や少額融資を通じて収益化(Monetization)が進んでおり、3Q25の収益は前年同期比29%増と高成長を続けています。
構造的な強み
  • エコシステムの支配力: 銀行口座、QR決済、住宅ローン、投資信託と、顧客のライフサイクル全体を自社グループ内で完結できる商品ラインナップを持っています。
  • 高いデジタル採用率: 顧客の90%以上がデジタルチャネルを利用しており、売上の61%がデジタル経由で発生しています。これにより、物理店舗のコストを最適化しつつ、顧客との接点を維持しています。

🌩️ 第3章:課題と向き合い方(外部環境への対応)

コロンビア経済の減速と金利変動は、最大の懸念材料です。

⚠️ 資産質の悪化と金利低下の圧力

高金利とインフレの影響で、特に消費者ローンやSME(中小企業)向けローンの返済能力が低下しています。

  • 資産質の悪化(COP): 90日以上延滞債権比率は3.3%と、前年同期(3.0%)から上昇しています。これに対し、引当金を積み増すことで対応しており、カバー率(引当金/延滞債権)は106%と100%超を維持してリスクに備えています。
  • マージンの縮小圧力: コロンビア中央銀行の利下げに伴い、貸出金利が低下する一方で、預金コストの低下には時間がかかるため、NIM(純金利マージン)が縮小(7.0%→6.3%)しています。
  • 対応策: リスクの高い貸出を抑制し、資産の質を優先する方針へ転換。また、金利変動の影響を受けにくい手数料ビジネス(Nequiや決済事業など)の成長で、金利収入の減少を補う構造へのシフトを進めています。

🌱 第4章:未来像(持続可能な成長への道筋)

5年・10年先のGrupo Cibestは、単なる「銀行」から「金融を核とした生活プラットフォーム」への進化を目指しています。

Nequiのさらなるマネタイズと、中米地域での事業拡大が成長の鍵です。特にNequiは、決済データを活用したクレジットスコアリングにより、これまで銀行サービスを受けられなかった層(アンバンクト層)への融資拡大を可能にします。これはNu Holdingsなどのチャレンジャーバンクに対する強力な対抗軸となります。

また、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みも強化しており、サステナブルファイナンスの残高は58兆ペソに達しています。地域経済の脱炭素化を金融面から支えることで、長期的な社会インフラとしての地位を盤石なものにしようとしています。

まとめ:この企業を一言で表すなら

象(伝統的銀行)の体力と、チーター(フィンテック)の敏捷性を併せ持つ
「金融界のキメラ」。

伝統的な顧客基盤という岩盤の上に、Nequiというデジタルエンジンを搭載。
この「新旧融合」こそが、競争激化するラテンアメリカ市場での生存証明です。

企業価値を「構造」から考える

グローバル企業の競争力は、成長率や市場規模だけでは測れません。
どの市場に組み込まれ、どの制度・ネットワークに支えられているか という構造が、 長期的な価値を左右します。
▶ 世界株 企業構造図鑑
制度・技術・ネットワーク・ノウハウといった観点から、 世界市場で成立している企業構造を整理しています。