良品計画(7453):「感じ良い暮らしのインフラ」を目指す

【企業図鑑】Ryohin Keikaku Co., Ltd.
「わけあって、安い」から「感じ良い暮らしのインフラ」へ。
無印良品が挑む、地域密着とグローバル成長の二層戦略。

この企業に注目する理由

── 「第二の創業」がもたらした、値引きに頼らない高収益体質

かつて「無印良品」は、都心部の商業施設でおしゃれな雑貨を買う場所でした。しかし今、その姿は大きく変わりつつあります。スーパーマーケットの隣に店舗を構え、地域のコミュニティセンターとしての役割を担う──これが、良品計画が掲げる「第二の創業」の姿です。

この戦略転換は、数字にも鮮明に表れています。2025年8月期第1四半期では、営業利益が前年同期比で約2.5倍に急伸しました。注目すべきは、単なる売上の増加だけでなく、定価販売の徹底と在庫コントロールによって「利益率」が劇的に改善している点です。ブランドの原点に立ち返りながら、生活のインフラへと進化する同社の構造的な強さを読み解きます。

🛒 第1章:どんな企業なのか(事業の全体像)

── 日本発、世界33の国と地域に広がる「ライフスタイル提案」

良品計画の事業は、衣服・雑貨、生活雑貨、食品という生活の基本となる3つのカテゴリーで構成されています。特定のブランド名(ロゴ)を前面に出さず、「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡素化」という3つの視点で作られた商品は、世界中で独自のポジションを築いています。

現在の事業構造の特徴は、「生活圏への出店加速」「グローバル展開」です。国内では日常的に来店頻度の高いスーパー隣接立地などへ出店し、海外では東アジア(中国・台湾・韓国)や東南アジア・オセアニアを成長ドライバーとして位置づけています。

🌿 第2章:なぜ特別なのか(構造的な強み)

── 「公益人本主義」が生む、独自の商品力と地域への浸透

1. 究極の「標準化」商品群

流行を追うのではなく、暮らしに必要な「標準(スタンダード)」を作り続ける力です。スキンケアやカレーなどの食品、機能性インナーなど、季節やトレンドに左右されにくい定番品が売上のベースを支えています。これにより、ファッションアパレル特有の「流行り廃りのリスク」を低減しています。

2. 生活圏へのドミナント出店

都心の一等地だけでなく、顧客が毎日通うスーパーマーケットの隣や地方のロードサイドへ出店する戦略(生活圏出店)を加速させています。これにより、「わざわざ行く店」から「日常的に使う店」へと顧客との関係性を深化させています。

3. 地域に根差した「土着化」

グローバルブランドでありながら、各地域の特産品を発掘・販売したり、古民家再生を行ったりと、地域課題の解決にコミットする「土着化」を進めています。これが地域住民からの信頼(エンゲージメント)を高め、他社との差別化要因となっています。

🚧 第3章:課題と向き合い方(外部環境への対応)

── グローバル展開の不均衡と為替の影響

堅調な業績の一方で、構造的な課題も存在します。

  • 海外事業のポートフォリオ: 東アジア(特に中国大陸)は堅調に回復・成長していますが、欧米事業はまだ再建の途上にあります。地域によって収益性にばらつきがあり、特定の地域への依存度が高い点はリスク要因となり得ます。
  • 為替とコスト構造: 海外生産比率が高いため、円安は調達コストの上昇に直結します。これに対し、同社は為替予約によるヘッジだけでなく、東南アジアでの現地調達・現地販売の強化や、ベトナムでの生産拡大など、サプライチェーンの最適化で対応しています。

🚀 第4章:未来へのビジョン(成長戦略)

── 「商品力・店舗力・人的資本」の三位一体改革

1. 戦略商品の開発強化

天然素材を活用した機能性インナーや、発酵技術を用いたスキンケアなど、独自性のある戦略商品の開発を強化しています。これにより、「無印良品でなければならない」理由を作り出し、定価販売でも売れる強い商品群を構築します。

2. 東南アジア・オセアニアの成長加速

人口ボーナス期にある東南アジア地域を「第二の中国」のような成長柱にするべく、出店を加速させています。特にタイやベトナムでの事業拡大は、今後のグローバル成長の鍵を握ります。

3. 人的資本経営(全社員が主役)

店舗スタッフが自律的に考え行動する「個店経営」を推進しています。マニュアル通りではなく、地域の特性に合わせて現場が判断することで、店舗の魅力と運営効率を同時に高める狙いがあります。

まとめ:この企業を一言で言うなら

「思想を商いにする、生活インフラの設計者」

単なる小売業の枠を超え、「感じ良い暮らし」という哲学を商品と店舗を通じて社会に実装し、地域の課題解決と収益性を両立させようとする、稀有なビジョナリー企業です。

企業価値を「構造」から考える

企業の強さは、売上や成長率だけで決まるものではありません。
どこに組み込まれ、何によって支えられているか という構造が、 長期的な価値を左右します。
▶ 日本株 企業構造図鑑
ビジネスモデル・制度・ノウハウなど、 企業の土台となる構造から読み解く企業分析をまとめています。