第1回:AIバブルは1929年の再来か?:「似ている部分」と「決定的に違う部分」を分解する

はじめに|この連載の立ち位置

本記事は、
「いつ暴落するか」「AIバブルは崩壊するか」

を予測するものではありません。
目的は一つです。

市場がなぜ繰り返し「熱狂→過剰→不安定化」という同じ形をとるのか、その構造を理解すること。

歴史は未来を正確に再現しません。
しかし「同じ条件が揃うと、似た歪みが生まれる」ことは、100年以上の金融史が示しています。

問いの設定|本当に「1929年と似ている」のか?

近年、AIブームをめぐって
「1929年大恐慌前夜と同じだ」という言説が頻繁に見られます。

この比較は、

  • ✔ 完全に間違いではない
  • ✔ しかし、そのまま信じると誤解を生む

重要なのは「どこが似ていて、どこが違うのか」を分解することです。

第1章|1929年の本質は「株価」ではなく「信用」

1929年の米国株式市場は、
技術革新(自動車・電力・通信) に支えられた成長相場でした。

問題の核心は、
📌 成長そのものではなく、それを支えた“信用構造” にあります。

当時の特徴
  • 個人投資家が証拠金(マージン)で株を購入
  • 株価上昇がさらなる信用供与を呼ぶ
  • 借金で買った株が、担保として再利用される

👉 価格上昇 × レバレッジ × 楽観

この三点が揃ったとき、市場は不安定になります。

第2章|現代のAI相場に見られる「共通構造」

2020年代のAI相場は、1929年と全く同じではありません。
しかし、構造レベルでは重なる部分 が存在します。

共通点①:物語(ナラティブ)が先行する

「AIはすべてを変える」
「生産性革命が起こる」
これは事実である可能性が高い一方、
期待が数字を先行して走る局面 が生まれやすい。

共通点②:資本が一方向に集中する

  • 巨大テック・半導体・インフラ企業に資金が集中
  • 指数・ETF・オプションを通じた間接投資が拡大

結果として
📌 価格が「急激な需要」ではなく「資金フロー」で動く割合 が高まります。

第3章 & 第4章|決定的に違う「制度」と「主体」

① 中央銀行の存在

現代は流動性供給の即応性や、銀行規制が大きく進化しています。

👉 同じ歪みが生まれても、崩れ方は同じにならない

② 投資主体の変化

年金や巨大ファンド、ルールベース運用が主役。これはボラティリティを抑える半面、一方向に動くと止まりにくい両面性を持ちます。

第5章|重要なのは「結論」ではなく「条件」

この問いに対する答えは、こうなります。

AIバブルは1929年の再来ではない
しかし、同じ“信用と期待の歪み”を内包している可能性はある

問題は

  • いつ崩れるか ❌
  • 崩れるかどうか ❌

ではなく、

  • ✔ どの条件が揃ったら不安定化するか
  • ✔ その時、ポートフォリオは耐えられるか

です。

まとめ|この回で持ち帰るべき視点

  • バブルは「価格」ではなく「信用構造」から始まる
  • 技術革新そのものが問題なのではない
  • 中央銀行と制度は進化しているが、歪みが消えたわけではない
  • 投資家が見るべきは 未来予測ではなく、現在の前提条件
次回予告|第2回
バブルを生んだ「信用革命」
―― なぜレバレッジは、いつも同じ顔で現れるのか