✅ 第2章:規制緩和の波 — 何が変わり、何が失われたのか
1980年代のレーガン政権以降、「規制は経済成長の阻害要因である」という考え方が政策の主流となっていきました。この流れの中で、大恐慌の教訓から生まれた数々の規制が、徐々に緩和されていくことになります。
その象徴的な出来事が、1999年に成立したグラム・リーチ・ブライリー法でした。この法律により、グラススティーガル法は実質的に撤廃され、金融機関は再び商業銀行業務と投資銀行業務を同時に行うことが可能になりました。
⚠️ 「大きすぎて潰せない」問題の誕生
規制緩和により金融機関の統合が進み、巨大金融コングロマリットが次々と誕生しました。これらの機関は経済全体にとって「大きすぎて潰せない」存在となり、結果として暗黙の政府保証を背景に、より大きなリスクを取るようになったと考えられています。
2008年のリーマンショックでは、世界全体で約9兆ドルの損失が発生し、「市場は自己規律できる」という信念が完全に崩壊しました。
規制緩和は経済成長を促す一方で、リスクの所在を不透明にしました。「市場の自由」と「安全網」のバランスをどう取るか──この問いはいまも続いています。
2章の要点:規制緩和は「大きすぎて潰せない」金融機関を生み、2008年危機を招いた。「自由」と「安全」のバランスは今も課題である。
✅ 第3章:現代の「無規制ゾーン」— SPAC・NFT・プライベートクレジット市場
現代の金融市場には、法の光が十分に届かない「影の領域」が生まれています。そこではスピードと革新が重視される一方で、リスクの蓄積が見えにくくなっています。
近年注目を集めているSPAC(特別買収目的会社)は、「白紙小切手会社」とも呼ばれ、従来のIPO(新規株式公開)に比べて規制要件が緩い仕組みとして知られています。2020年から2021年にかけて600社以上のSPACが設立され、その多くが投資家の期待を裏切る結果となっている可能性があります。
また、NFT(非代替性トークン)市場では、詐欺的な取引や価格操作が横行し、投資家保護の仕組みが十分に整備されていない状況が続いています。規制当局も、この新しい分野における適切な監督体制の構築に苦慮しているようです。
⚠️ 14兆ドル規模の「影の銀行システム」
最も懸念されるのが、14兆ドル規模にまで拡大したプライベートクレジット市場かもしれません。この市場は透明性に欠け、リスク評価が困難であり、2008年の金融危機を引き起こした「影の銀行システム」との類似点が多く指摘されています。
これらの「無規制ゾーン」は、規制当局の追跡が困難な新しい金融商品として、次の金融危機の温床となる可能性が懸念されています。
3章の要点:SPACやプライベートクレジットなど、規制の光が届かない「影の領域」が拡大し、新たなリスクが蓄積されている。
✅ 第4章:富の格差という時限爆弾
2023年のデータによると、世界の上位1%の富裕層が全世界の富の45%を保有しています。
規制緩和により、複雑で高収益が期待される投資機会の多くが、機関投資家や超富裕層に限定されるようになりました。一方で、一般の個人投資家は相対的に高リスクな商品への誘導や、情報格差による不利な取引を強いられる場面が増えているかもしれません。
プライベート市場への参加は、最低投資額の制限により事実上、機関投資家と超富裕層に限定されています。これにより、最も収益性の高い投資機会から一般投資家が排除され、富の格差が加速する構造が形成されていると考えられます。
投資リターンの格差は、やがて教育や住居、医療の格差へと波及します。それは市場の問題ではなく、社会全体の「持続性」を脅かす課題です。
また、金融リテラシーの格差も、経済格差を拡大させる要因の一つとなっているかもしれません。複雑な金融商品が増加する中で、適切な知識を持たない投資家が不利な立場に置かれる可能性が高まっています。
4章の要点:投資機会と金融リテラシーの格差が、富の格差を1920年代レベルまで押し上げ、社会の持続性を脅かしている。
✅ 第5章:民主主義へのリスク — 経済的不平等が社会に与える影響
富の極端な集中は、政治献金やロビー活動を通じて政策決定過程に大きな影響を与える可能性があります。これにより、富裕層に有利な政策が優先され、格差がさらに拡大するという悪循環が生まれるかもしれません。
経済学者たちの研究によると、経済的不平等の拡大は社会的分断と政治的過激化を招く傾向があるとされています。特に若年層の間では、現在の資本主義システムに対する懐疑的な見方が広がっているという調査結果も報告されています。
歴史家の中には、現在の格差水準が1920年代の水準に回帰しつつあると警告する声もあります。次に起こる危機は、単なる金融危機にとどまらず、社会制度全体を揺るがす可能性があるのではないでしょうか。
投資とは、単なる資産形成ではなく「社会との関わり方」の選択でもあります。自分の資金がどの世界を支えるのか──それを意識することこそ、次の時代の投資家の姿勢ではないでしょうか。
【本記事のまとめ】歴史からの教訓
危機は突然訪れるのではなく、見過ごされた警告の積み重ねから生まれるものかもしれません。
- 大恐慌の教訓(規制)が、現代の規制緩和によって失われつつあります。
- SPACやプライベートクレジットなど、新たな「無規制ゾーン」が次の危機を招く可能性があります。
- 1920年代に匹敵する「富の格差」は、金融だけでなく社会全体の不安定化要因となり得ます。
歴史を知り、現在を冷静に見つめることで、
私たち個人投資家も賢明な選択ができるはずです。
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※本記事は歴史的事実と専門家の見解に基づいた分析記事であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。
投資歴25年の個人投資家Sakumiが執筆。初心者向けに実体験に基づいた投資ノウハウや口座選びのポイントを発信中。
