投資判断を「感覚」から「科学」へ。CAPMで期待リターンを考える
「この株、なんとなく上がりそう」
「みんなが買っているから大丈夫そう」——
投資を続けていると、どうしても感覚や雰囲気で判断してしまう瞬間があります。 前回までの記事では、こうした感情や心理をどう扱うかを整理してきました。
では次の一歩として、こんな疑問が浮かびませんか?
- このリスクを取るなら、どれくらいのリターンが妥当なのか?
- 今の成績は「上出来」なのか、「物足りない」のか?
その答えを考えるための最低限のモノサシが、今回扱うCAPM(資本資産価格モデル)です。
なぜCAPMを知ると投資判断が変わるのか
投資の世界には、昔から変わらない大原則があります。
「リスクを取るからこそ、リターンが得られる」
CAPMは、この原則を使って
- その銘柄はどれくらい「リスクが高い」のか
- そのリスクに対して、最低限どれくらいのリターンを期待すべきか
を整理するための理論です。
「儲かりそうかどうか」ではなく、
「このリスクを取るなら、これくらいは欲しい」
と考えられるようになるのが、最大の価値です。
CAPMの考え方を1分で
CAPMは難しそうに見えますが、考え方はとてもシンプルです。
期待リターンは、次の3要素で決まる
期待リターン =
① 安全資産のリターン +
② ベータ(その株の性格) ×
③ 市場全体のリスクプレミアム
① 安全資産のリターン(rf)
これは投資の「スタートライン」です。
- 定期預金
- 国債(10年国債など)
ほぼリスクなしで得られるリターンを基準に、 株式投資ではそれ以上を期待する、という考え方です。
③ 市場全体の「おまけ」(マーケット・リスク・プレミアム)
市場全体(TOPIXやS&P500など)に投資することで、 安全資産を上回って期待される平均的な上乗せ分です。
「わざわざリスクを取るなら、これくらいは欲しいよね」 という市場全体の合意、と考えると分かりやすいでしょう。
② ベータ(β)|株の「性格」
CAPMの核になるのが、このベータ(β)です。
ベータは、 市場全体の動きに対して、その株がどれくらい敏感に反応するか を数値化したものです。
ベータ値のイメージ
- β = 1:市場と同じ動き(インデックス)
- β > 1:市場より大きく動く(ハイリスク)
- β < 1:市場より穏やか(ディフェンシブ)
NISAでS&P500のインデックスファンドを買うのは、β=1を取りにいく投資だと言えます。
実践:CAPMで「期待リターン」を考える
仮に次の条件だとします。
- 安全資産:0.1%
- 市場のリスクプレミアム:5%
このとき、
- β = 0.5 → 期待リターン 約2.6%
- β = 1.5 → 期待リターン 約7.6%
もしβ=1.5の銘銘で、どう見積もっても年4%程度しか期待できないなら、
「取っているリスクの割に、リターンが低い」= 割高・非効率
という判断ができます。 これがCAPMを使う意味です。
CAPMの注意点(重要)
- ベータは過去データに基づく
- 期間や指数によって数値は変わる
- 市場リスク以外は説明できない
CAPMは未来予測の魔法ではありません。
あくまで「現時点での合理的な最低ライン」を考えるためのモノサシです。
まとめ|感覚を否定せず、判断に軸を持つ
- CAPMは期待リターンの基準を与えてくれる
- ベータは「どれくらい揺れるか」を示す指標
- NISAでもリスク設計に使える
「なんとなく良さそう」から一歩進んで、
「このリスクなら、このくらいは欲しい」 と考えられるようになる。
CAPMは、投資判断を感覚から構造へ移すための、 最初の羅針盤です。
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