運用成績を”構造的に”理解する:ベータとアルファの考え方

市場に勝つための「構造的思考」
アルファとベータで運用成績を正しく評価する

前回の記事では、CAPMを使って
「どのリスクを取れば、どれくらいのリターンが妥当か」
という“期待値の考え方”を整理しました。
今回はそこからもう一歩踏み込み、
「そのリターンの中身をどう分解し、どう評価するか」
を考えていきます。

キーワードは
ベータ(β)とアルファ(α)
この2つを理解すると、投資成績を
「運」ではなく「構造」で捉えられるようになります。

「15%のリターン」は本当に優秀なのか?

「今年、このファンドは15%のリターンでした」
一見すると素晴らしい成績に見えます。 ですが、もし同じ年に市場全体が20%上昇していたらどうでしょう?

その場合、このファンドは
市場平均より5%も劣後していたことになります。

投資成績は、市場と比べて初めて意味を持つ。

その比較軸を与えてくれるのが、アルファとベータという分解の考え方です。

投資成績は2つの要素に分けられる

投資リターンの基本構造

  • ベータ(β):市場の波に乗った部分
  • アルファ(α):市場を超えた上乗せ部分

エスカレーターに乗る例で考えてみましょう。

エスカレーターそのものが動いている力がベータ
その上で自分の足で歩くことで得られる差がアルファです。

何もしなくても上がれるが、本当に上手いかどうかは「歩いた分」で決まる。

ベータとは何か?|市場の波そのもの

ベータとは、市場全体の動きに対して、どれくらい連動するかを表す指標です。

市場 β=0.5 β=1.0 β=1.5
+10% +5% +10% +15%
-10% -5% -10% -15%

ベータが高いほど、上昇相場では有利ですが、下落相場では同じだけ痛みも大きくなります。

重要なのは、このベータリスクは分散しても消えないという点です。これをシステマティック・リスクと呼びます。

アルファとは何か?|市場を超える付加価値

アルファとは、ベータ(市場要因)では説明できない超過リターンです。
式で書くとシンプルです。

運用成績 = ベータによるリターン + アルファ

企業分析、需給判断、リスク管理など、運用者の判断が生み出した差がアルファです。

アルファは本当に存在するのか?

「長期的にアルファは取れない」という意見もあります。 一方で、複数の調査では長期では一定の超過リターンが確認されるという結果も報告されています。

例えば、ラッセル・インベストメントの長期分析では、

  • 国内株式アクティブ運用:年率約+1%台
  • 外国株式アクティブ運用:年率約+1%前後

といった平均的なアルファが示されています。 ただし、誰でも・常に・簡単に取れるものではないという点は忘れてはいけません。

投資判断は二段階で考える

① ベータを決める(資産配分)

まず考えるべきは、どれくらい市場リスクを取るか。 ここではアルファは考えず、資産クラスごとのリスク・リターンだけを見ます。

② アルファを取りにいく(運用手段)

次に、

  • インデックス(低コスト・確実)
  • アクティブ(上振れ期待・ブレも大)

をどう組み合わせるかを考えます。

ベータ設計とアルファ追求は別物という整理が、長期投資では非常に重要です。

よくある誤解と注意点

  • 短期のアルファはほぼ偶然
  • 1〜2年の成績で判断しない
  • 高ベータ=上手い投資ではない

アルファの検証には10年単位の時間が必要とされることも多く、短期成績に一憂すると、構造的に不利な行動を取りがちになります。

まとめ|成績を「構造」で見る力が武器になる

  • ベータ:市場にどれだけ乗っているか
  • アルファ:市場を超えた付加価値

この2つを分けて考えることで、
自分の成績の正しい位置づけ、相場環境に応じた戦略選択、長期的な判断の安定が可能になります。

📚 次に読むおすすめ

🧠 投資家の思考と行動科学
知識を「一貫した投資行動」に変えるための思考設計。