ステーブルコインとCBDC──国家と銀行の逆襲

管理されるデジタル通貨の正体
──ステーブルコインとCBDCは「自由」への対抗策か?

ビットコイン後の世界で、国家と企業が選んだ別解|第5話

💡 プロローグ:自由の思想に対する「現実的な回答」

ビットコインは、中央管理者を排し「誰にも支配されない通貨」という思想を世界に提示しました。

しかし現実の経済は、価格の安定、規制、税制、既存金融との接続を必要とします。

この思想と現実のギャップに対し、国家と企業が提示した解決策が
「ステーブルコイン」と「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」です。

I. ステーブルコインとは何か

ステーブルコインは、暗号資産が抱えていた価格変動(ボラティリティ)という致命的な弱点を克服するために生まれました。

  • ブロックチェーン上で24時間即時送金
  • 米ドルなど法定通貨と連動する価格安定性

これは「暗号資産の技術」と「法定通貨の信用」を融合した、民間主導のデジタル通貨です。

ステーブルコインの3類型

  • 法定通貨担保型: USDT / USDC / PYUSD
  • 暗号資産担保型: DAI(コードへの信用)
  • アルゴリズム型: Terra/Luna崩壊(2022年)が示した構造的限界

II. CBDCとは何か

CBDC(中央銀行デジタル通貨)は、法定通貨そのものをデジタル化し、国家が直接管理する通貨構想です。

各国のスタンス

  • 米国: プライバシー懸念と政治的反対により、導入は事実上の棚上げ(研究は継続)
  • EU: デジタルユーロで金融主権と決済自立性を確保
  • 中国: e-CNYで監視・効率・国家統制を強化
  • 日本: 導入可否は未定だが、実証実験(パイロット)は進行中

III. ステーブルコインとCBDCの決定的違い

比較項目 ステーブルコイン CBDC
発行主体 民間企業・DAO 中央銀行
信用の源泉 準備資産またはプログラム 国家信用
プライバシー 限定的(匿名性はあるが、追跡・凍結が可能) 中央管理(取引監視が前提)
思想 民間主導・市場原理 統制・管理

※USDT・USDCなど主要ステーブルコインは、発行体が特定アドレスを凍結できる機能を持つ。

IV. 投資家視点で見た「強み」と「弱み」

ステーブルコイン(USDT / USDC 等)

  • 強み: 銀行を介さず24時間決済可能。DeFiなど高利回り運用へのアクセス。
  • 弱み: 発行体リスク、規制による凍結、デペグ(1ドルとの価格乖離)リスク

CBDC

  • 強み: 国家保証による信用リスクの低さ。オフライン決済への対応(検討中)。
  • 弱み: 金利が付かない可能性、監視・利用制限の懸念。

📚 エピローグ:管理か、自由か

ビットコインが示したのは「中央からの自由」でした。

それに対し、国家と銀行は

  • ステーブルコイン
  • CBDC
  • 銀行発行デジタル通貨

という「管理された形」で対抗しています。

通貨の未来は、技術ではなく「誰を信じるか」で決まる。

次章では、これらすべてを踏まえ、個人投資家はどの資産をどう位置づけるべきかを整理します。

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