小型モジュール炉(SMR)は次世代電源になり得るのか|制度・コスト・社会受容性から読む構造分析

技術論ではなく「詰まりやすい条件」と産業文脈を整理する市場観測ログ
── 技術ではなく、制度・コスト・社会受容性から構造を観測する

本記事は、SMRを投資テーマとして推奨するものではありません
エネルギー・政策・産業構造の変化の中で、
なぜ今SMRが語られているのか/どこで詰まりやすいのかを整理する市場観測ログです。

SMRとは何か(整理)

小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)とは、出力30万kW以下の小型原子炉を工場でモジュール化し、現地で組み立てることを前提とした原子力発電方式です。

技術的な新規性以上に注目されているのは、「建設・安全・用途」を分散させる設計思想にあります。

SMRの主要技術タイプと位置づけ

軽水炉型(PWR/BWR)

既存技術の延長線。安全設計は成熟しているが、量産前提が崩れると経済性が出にくい

高温ガス炉型(HTGR)

発電に加え、水素製造・産業熱供給という用途拡張が可能。ただし燃料供給と実績がボトルネック

高速炉・溶融塩炉系

理論上の効率は高いが、実証フェーズ色が強い

なぜIT大手がSMRに関心を示すのか

Google、Amazon、MetaなどがSMRに関心を示す背景には、生成AIとデータセンターの電力需要増があります。

再エネでは補えない24時間・立地非依存・脱炭素という条件を、SMRが部分的に満たし得るためです。

※ただし「データセンター隣接原子炉」は、社会受容性と規制面で依然として不確実性が高い構想です。

構造的リスクと詰まりやすい点

  • HALEU燃料供給問題:2026年時点でも供給不足は深刻。米DOE主導の投資は進むが、民間量産は未達
  • 量産前提の経済性:初号機〜数基ではコスト高止まりしやすい
  • 規制と社会受容性:技術よりも「手続き」がボトルネックになりやすい

2025–2026年 主要動向

  • BWRX-300:2029年後半予定
  • TerraPower:2031年グリッド接続予定
  • Kairos Power:実証・商用分離展開
  • NuScale:TVA・ルーマニア案件進行
  • 中国 Linglong One:2026年前半 商用運転予定

日本の位置づけ(2025–2026)

  • JAEA HTTR:2025年3月に原子炉設置変更申請、2030年までに水素製造実証を目標
  • 規制環境:標準設計審査制度は未導入、依然として個別審査方式
  • 国際協力:英国ONRとHTGR安全情報交換の枠組みを締結

まとめ:SMRは「未来」ではなく「条件付きの現在」

SMRは万能な次世代電源ではありません。しかし、脱炭素・分散電源・産業用途という文脈において、無視できない存在になりつつあります。成否を分けるのは、技術そのものよりも制度・燃料供給・社会的合意です。

市場がどこに期待を乗せ、どこで現実に引き戻されるのか。SMRはその力学を観測するための、良い教材と言えるでしょう。

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