勝ち続けるために「取引しない」という選択
伝説のトレーダーが語った “取引をやめる勇気” とは
ジェシー・リバモアの人生は、栄光と破滅が交互に訪れる壮絶な軌跡でした。 4度の大成功と、4度の破産──。
1929年の大暴落で「ウォール街の熊」と呼ばれながらも、 なぜ彼は最終的に悲劇的な結末を迎えたのでしょうか。
その答えの一つが、「トレードから離れるべき時を知らなかった」ことです。
There is a time to go long, a time to go short, and a time to go fishing.
— ジェシー・リバモア
この記事では、リバモアの成功と失敗の両面から、 「休むこと」こそが最大の防御であり、究極の安全マージンである理由を解説します。
第1章:リバモアという男 ― 天才と狂気の軌跡
ジェシー・リバモア(1877–1940)は、14歳で相場の世界に入り、 株価が印字される紙テープの流れを読み取る「テープリーディング」の才能を発揮しました。
チャートもAIもない時代に、彼は価格の動きそのものから市場心理を読み取る 天才的な感覚を持っていました。
Markets are never wrong — opinions often are.
しかし彼の人生は、この言葉の裏返しでもありました。 成功の後に生まれる過信が、市場よりも自分の意見を優先させ、 同じ過ちを何度も繰り返させたのです。
このサイクルを、彼は生涯で4度も経験しました。
第2章:リバモアが語った「休むべき時」の教訓
リバモアの哲学は『欲望と幻想の市場』に集約されています。 その核心は、「取引しない時間」の価値です。
- チャンスが来るまで待て
- 勝った後こそ休め
- 負けた後も休め
- 市場が分からない時は何もするな
- 休んでいる間に研究しろ
It was never my thinking that made the big money for me. It was always my sitting.
「大金をもたらしたのは考えることではなく、じっと座っていたことだった」
この言葉を象徴するのが、1907年の成功後に取った 2ヶ月間の“釣り休暇”です。
彼はこう語っています。
「大勝ちした後、人は自分を天才だと錯覚する。
その状態でトレードすれば、必ず失敗する」
第3章:なぜ人は「休めない」のか ― 心理的要因
① FOMO(取り残される恐怖)
「今動かなければ儲け損ねる」という焦り。 しかしリバモアは、本当のチャンスは年に数回しか来ないと述べています。
② 勝利の陶酔・損失回復の焦り
大勝ち後の万能感、連敗後のリベンジトレード。 どちらも感情が主導権を握った状態です。
③ 退屈への耐性のなさ
何もしない時間に耐えられず、不要な取引を重ねてしまう。 しかしトレーダーの仕事は「動くこと」ではなく「待つこと」です。
第4章:休まなかった代償 ― リバモアの失敗事例
ケース①:1908年 綿花取引の大失敗
1907年に約300万ドルを稼いだ直後、休まず次の取引へ。 得意分野外の綿花相場に手を出し、全財産と巨額の借金を失いました。
教訓: 成功直後こそ、最大のリスクが潜む。
ケース②:1929年後の転落
史上最大の成功(約1億ドル)から数年で再び破産。 市場構造の変化を受け入れられず、「休んで学ぶ」ことができませんでした。
教訓: 市場が変わった時は、一度立ち止まる必要がある。
第5章:現代トレーダーへの実践ルール
- ① 大勝ち後(休止目安:1週間〜1ヶ月)
利益確定・出金・振り返り。市場から物理的に距離を置く。 - ② 連敗後(休止目安:2週間〜2ヶ月)
全ポジションを閉じ、手法と心理を再構築する。 - ③ 市場が分からない時
何もしない。ポジションを持たないことも立派な選択。 - ④ 私生活が不安定な時
トレード禁止。相場で人生問題は解決できない。 - ⑤ 定期的な強制休暇
四半期に一度「ノートレード週間」を設け、視野をリセットする。
エピローグ:リバモアが遺した最大の教訓
市場が人を打ち負かすのではない。 人が自分自身を打ち負かすのだ。
The market does not beat them. They beat themselves.
「休むも相場」。 それは弱さではなく、長く生き残るための知恵です。
この教えを実践することこそが、 投資・トレードにおける究極の安全マージンなのです。
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