エブリシングバブルとは何か?
― すべてが高騰して見える時代の正体と、資産を守るための現実的思考 ―
はじめに|「すべてが上がっている」ように見える理由
株式、債券、不動産、金、暗号資産――
一見すると、あらゆる資産が同時に高値圏にあるように見える時代が続いています。
この状況はしばしば「エブリシングバブル」と呼ばれ、
「近く崩壊する」「史上最大のバブルだ」といった刺激的な言説と共に語られがちです。
しかし、本当に重要なのは
「バブルかどうかを断定すること」ではありません。
本記事では、
- ✔ なぜ“すべてが上がっているように見える”のか
- ✔ それは異常なのか、構造的必然なのか
- ✔ 個人投資家は何を前提に行動すべきか
を、できるだけ感情や煽りを排し、構造的に整理します。
第1章|エブリシングバブルという言葉の整理
1-1. 定義
エブリシングバブルとは、
複数の資産クラスが同時に高水準で評価されている状態を指す概念的な呼び名です。
重要なのは、
「すべてが実体価値を大きく超えている」と証明された状態を意味する言葉ではない、
という点です。
1-2. なぜ“同時”に見えるのか
通常、資産価格は以下のように分散します。
- 景気拡大期:株式が強く、債券は弱い
- 景気後退期:債券・金が強く、株式は弱い
しかし近年は、
「通貨価値を基準に見れば、すべてが上がって見える」
という現象が起きています。
第2章|本質は「資産バブル」ではなく「通貨の希薄化」
2-1. 共通分母としての通貨
すべての資産価格は、最終的に通貨建てで表示されます。
もし通貨の供給量が長期的に増え続ければ、
- 資産価格が上がっている
- 通貨の購買力が下がっている
この2つは、表裏一体になります。
2-2. 「上がっている」のではなく「逃げ場がない」
低金利・金融緩和が長期化すると、
現金や低利回り資産は意図せず価値を削られる存在になります。
結果として、
- 株式
- 不動産
- 金・コモディティ
- オルタナティブ資産
へと資金が同時に流れ込みやすくなります。
これは熱狂というより、
構造的な資金移動と見る方が自然です。
第3章|過去のバブルと「決定的に違う点」
3-1. 共通点
- 楽観的なナラティブの拡散
- レバレッジの増加
- 価格と実体の乖離
3-2. 決定的な違い
過去の典型的なバブルは、
「特定の資産」に集中していました。
一方、現在語られるエブリシングバブルは、
- 金融政策
- 通貨制度
- 人口構造
- グローバル資本移動
といった制度レベルの問題と強く結びついています。
つまり、
「一斉崩壊」よりも
「長期的な歪み調整」が起きやすい構造
第4章|個人投資家が取るべき現実的スタンス
4-1. 予測しない
暴落の時期や規模を正確に当てることは不可能です。
4-2. 前提条件を整理する
- 自分はどの通貨圏で生活しているか
- いつ資金が必要になるか
- 価格変動にどこまで耐えられるか
4-3. 分散とは「保険」
分散投資はリターン最大化の技術ではなく、
生存確率を高める設計です。
第5章|「何もしない」という選択肢
すべての局面で行動する必要はありません。
- ✔ 過度なレバレッジを避ける
- ✔ 生活防衛資金を確保する
- ✔ 構造を理解し続ける
これだけでも、多くの投資家より優位に立てます。
まとめ|エブリシングバブルという言葉に飲み込まれない
「すべてが上がっている」という現象は、
必ずしも「すべてが間違っている」ことを意味しません。
重要なのは、
価格ではなく構造を見ること。
悲観でも楽観でもなく、
前提条件を整理し、選択肢を残す。
それが、この時代における
最も現実的な資産防衛戦略です。
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このコラムは 経済コラム|信用と金融構造 の一部です。
