原因・歴史・2025年の日本リスクをわかりやすく解説
景気後退と物価高が同時に進む「最悪の経済シナリオ」――それがスタグフレーションです。 1970年代の教訓を振り返りながら、現代日本が直面するリスクと向き合い方を整理します。
経済の矛盾:景気停滞と物価高の「二重苦」
スタグフレーション(Stagflation)とは、 景気停滞(stagnation)と インフレ(inflation)が同時に進行する経済状態を指します。
通常、不況期には需要が減少し物価は下がると考えられます。 しかしスタグフレーションでは、景気が悪いにもかかわらず物価だけが上がるという、 経済学の「常識」を覆す現象が起こります。
給料は増えないのに生活必需品だけが値上がりする―― 家計にとって最も厳しい局面と言えるでしょう。
I. スタグフレーションの原因は「需要」ではなく「供給」
コストプッシュ型インフレの連鎖
スタグフレーションの主因は、需要拡大ではなく 供給側の制約によるコストプッシュ型インフレです。
- エネルギー・資源価格の急騰(オイルショック)
- 急激な為替変動(円安による輸入物価上昇)
- サプライチェーンの分断
- 生産性低下や構造的な供給制約
インフレ期待と「賃金・物価スパイラル」
さらに厄介なのがインフレ期待です。 物価上昇が続くと、労働者は賃上げを要求し、 企業はコスト増を理由に再び値上げを行います。
この「賃金・物価スパイラル」が定着すると、 景気後退下でもインフレが止まらない状況が生まります。
II. 歴史から学ぶ:1970年代スタグフレーションの実像
米国:ボルカー・ショックという劇薬
1970年代の米国では、インフレ率14%、失業率10%近くという深刻な事態に陥りました。
FRB議長ポール・ボルカーは、政策金利を20%近くまで引き上げる 超金融引き締めを断行。インフレ期待は沈静化しましたが、 短期的には深刻な景気後退と高失業率という大きな代償を伴いました。
英国:「英国病」と構造改革
英国ではインフレ率20%超、1976年にはIMF支援を要請する事態に発展。 これを契機に、サッチャー政権下で規制緩和・民営化・労働市場改革といった構造改革が進められました。
日本:「狂乱物価」から省エネ立国へ
日本でも1974年に消費者物価上昇率が24%に達しましたが、 金融引き締めと同時に、 省エネ技術・生産性向上・産業構造転換を急速に進め、 比較的短期間で安定を取り戻しました。
III. 2025年時点のリスク:日本はスタグフレーションか?
世界経済:複合ショックと政策ジレンマ
コロナ後の過剰流動性、地政学リスク、サプライチェーン混乱が重なり、 各国中央銀行は「インフレ抑制」と「景気下支え」の板挟みにあります。
日本の現状:スタグフレーション的圧力
- 景気要因:実質賃金の低迷(伸び悩み)、個人消費の停滞
- インフレ要因:円安、エネルギー・食料品価格上昇
- 緩和要因:失業率は低水準、賃金スパイラルは限定的
現時点では完全なスタグフレーションではないものの、 「境界線上にある」との評価が現実的でしょう。
企業・家計への影響:ミザリー指数の上昇
失業率とインフレ率を合計した ミザリー指数(悲惨指数)は、 国民生活の厳しさを映す指標です。
スタグフレーション下では、実質購買力の低下が消費を冷やし、 企業はコスト増と需要減の板挟みに陥ります。
IV. 予防と対策:金融政策だけでは解決できない
政策の限界
金融緩和はインフレを悪化させ、 金融引き締めは景気を冷やす―― スタグフレーションでは万能な政策は存在しません。
カギは「供給力」と「構造改革」
- エネルギー調達の多様化・省エネ投資
- 生産性向上(デジタル化・規制改革)
- サプライチェーンの強靭化
特に日本にとっては、供給制約を緩和する改革こそが最大の予防策です。
まとめ:過去の教訓を、現代の備えへ
スタグフレーションは突発的に見えて、 実は構造的な歪みの蓄積によって生じます。
歴史が示す教訓は明確です。
- インフレ期待の制御
- 供給側の強靭化
- 短期対策と中長期改革の両立
個人投資家にとっても、分散投資・インフレ耐性資産・情報のアップデートは、この時代を生き抜くための重要な防御策となるでしょう。
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