「10年で倍」は本当にすごいのか?
「売上が10年間で倍になった!」
一一見すると大きな成長に見えますが、
それが速いのか、遅いのかは数字だけでは直感的に分かりません。
そこで役立つのが CAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率) です。
CAGRは「年率○%で成長した」と一目で分かる形に変換してくれる指標です。
企業の成長力や投資リターンを期間の違いを超えて比較するために、欠かせない考え方です。
CAGRとは?
✅ 定義
CAGRとは、一定期間の初値と終値をもとに、
「毎年同じペースで成長した」と仮定した場合の年平均成長率です。
途中の増減をならして、「成長スピード」だけを抜き出すイメージです。
🧮 計算式
CAGR(%)={(終値 ÷ 初値)1 ÷ 年数 − 1}× 100
- 初値:調査開始年の数値
- 終値:調査終了年の数値
- 年数:期間(年)
具体例で理解するCAGR
A社の売上推移:
- 2015年:1,000億円
- 2025年:2,000億円
- 期間:10年
CAGR = (2000 ÷ 1000)1/10 − 1 ≒ 7.2%
これは、「A社は10年間、毎年7.2%ずつ成長し続けたのと同じ」と読み解くことができます。
CAGRを使うメリット
| メリット | 内容 | 実用度 |
|---|---|---|
| 直感的に比較できる | 「10年で倍」より「年7.2%」の方が分かりやすい | ★★★★★ |
| 期間が違っても比較可能 | 5年・10年など期間差をならして比較できる | ★★★★☆ |
| 複利効果を反映 | 投資リターンや企業成長を現実的に表現 | ★★★★★ |
CAGRの注意点(重要)
-
成長の「過程」は見えない
CAGRは平均値のため、途中の急成長・急落は無視されます。 -
初値と終値に左右されやすい
一時的な特需や落ち込みがあると、実態より良く(悪く)見えることがあります。 -
単独では判断できない
利益率・営業CF・競争環境と必ずセットで確認が必要です。
👉 CAGRは「成長しているか」ではなく「どの速度で伸びたか」を見る指標です。
企業分析での活用例【食品業界】
各社の有価証券報告書をもとに算出(直近決算ベース)
| 企業 | 開始時点売上 | 終了時点売上 | CAGR | 読み解きポイント |
|---|---|---|---|---|
| 日清食品HD | 506,107百万円 (2021年) |
776,594百万円 (2025年) |
約11.3% | 海外展開・価格改定が成長を牽引 |
| 明治HD | 1,191,765百万円 (2021年) |
1,154,074百万円 (2025年) |
約-0.8% | 成熟産業。収益性・配当重視の経営 |
| キリンHD | 1,849,545百万円 (2020年) |
2,338,385百万円 (2024年) |
約6.1% | 規模を活かした安定成長 |
投資への活かし方
| 用途 | 活用ポイント |
|---|---|
| 成長株の選定 | 売上CAGRが5%超なら成長株候補。ただし利益成長とセットで確認 |
| 業界比較 | 同業他社のCAGRを並べ、伸びている企業を見極める |
| 投資信託・ETF | 過去リターンをCAGR化し、安定性を比較 |
👉 投資判断では「過去のCAGR × 将来の市場環境」が重要です。
まとめ|CAGRは「成長速度」を測る物差し
- CAGRは成長スピードを一目で示す指標
- 期間・規模が違っても公平に比較できる
- 途中の変動は見えないため、他指標との併用が必須
CAGRは「成長しているかどうか」ではなく、
「どれくらいの速さで成長してきたか」を確認するための指標です。
過去のCAGRと、今後の競争環境・市場トレンドを組み合わせて、
持続可能な成長かどうかを見極めましょう。
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